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カセットコンロが爆発?もしもの時の店舗の賠償責任と保険のあれこれ

Vol.11 カセットコンロが爆発?もしもの時の店舗の賠償責任と保険のあれこれ


 

皆さんこんにちは。

つい先日、都内某所の飲食店で開店前の仕込み中にカセットコンロのガスボンベが爆発し、従業員の方が怪我をするという事故が発生しました。
従業員の方は軽傷で済んだとの事で不幸中の幸いではありますが、こういった事故が起きてしまうと、オーナーや怪我をさせてしまった相手などへの賠償など被害や過失の度合いによっては多額の責任を負う事になってしまうケースもあります。

そんなもしもに備えて、店舗出店されている、あるいはこれから出店をご検討されている皆様には是非とも知識として知っておいて頂きたい内容をまとめてみました。

①店舗で起こる事故ってなに?火災のあれこれ

まず、店舗で起こっている事故で最も多いのが火災事故です。

消防庁が公表している「令和4年 消防白書」の記載内容をみるかぎり、令和3年中に発生した建物火災19,549件のうち「飲食店:461件」、「物販店舗:235件」、「倉庫:461件」、「事務所等:706件」、「工場等:1,639件」となっており、住宅と店舗が併存する複合用途にいたっては2,478件に上ります。

こうしてみると、全国で発生している火災の約30%は商業用不動産で発生していると考えられます。
また、同じく東京消防庁のホームページに掲載されている「飲食店の厨房設備等に係る火災予防策ガイドライン」によると出火原因は「放置・忘れ」が30%と断トツです。

 

②損害賠償ってなに?関連法令のあれこれ

続いてその責任についてお話ししていきたいと思います。
もし仮に、自分達の過失で火災が発生し、近隣に対して損害を与えてしまった場合はどうなるのでしょうか。

日本には「失火責任法」という法律があります。これは、自分達が火元となって不動産やその他の財産(財物)に被害を与えてしまった場合に適用される法律で、火元責任者は民法上の損害賠償を支払う義務が生じませんよ。(故意または重大な過失を除く)というものです。

え?逆じゃないの?損害賠償を支払う義務発生するでしょ。と思われるかもしれないのですが、日本の建物は木造建築が多く、火災リスクが非常に高かったため、火災が発生してしまうと賠償金額が相当なものになってしまう為、火事を起こしてしまった人もそれにより被害を受けてしまった人も、弁償を請求する権利も義務もないという考え方に基づき、双方自己責任で処理しましょうという事になっています。
これは個人に対しても法人に対しても適用されます。

ちなみに、消火活動に伴う放水により水浸しになった場合なども賠償責任は負わなくてよいとされています。

 

③もしもに備えた保険にはどんなものがあるの?保険の種類あれこれ

上記の理由から、火事が起こってしまった際は、各家や店舗の住人が自分自身で加入している火災保険で損害を修復しなければなりません。
またマンション等のビルは共用部についての損害は、専有部以外は大家さんが加入している火災保険が適応される為、各部屋の借家人と家主の双方が火災保険に加入する必要がありますね。
つまり自らが起こしてしまうかもしれない火災と、隣家などが起こしてしまうかもしれない火災の双方に備えた火災保険に加入する必要がありますね。

ではどのような火災保険に入っておくのが安心なのか、以下でご説明いたします。

基本的には火災保険の「借家人賠償保険」「個人賠償責任保険」の2つに加入しておくと、自己が起こした、または他者が起こした火災いずれの損害についてもある程度カバーされます。

<1.借家人賠償保険>

この保険は、借家人の責に帰すべき火災や爆発等で戸室を損害し、家主に対して損害賠償責任を負ったときの損害を補償する保険です。
今回記事の冒頭で記載した様な、爆発事故が借家人の重度の過失があった場合、家主に対して損害賠償の責を負わなければなりません。
そのようなケースで「借家人賠償保険」が適用されます。

<2.個人賠償責任保険>

今回都内某所の飲食店で起こったガスボンベの爆発は、火災ではない為失火責任法が適用されず、自身で損害賠償をしなければなりません。
そして<借家人賠償保険>でご説明した補償内容は、自己が借りた戸室に対してのみ適用されるので他者に対して生じた賠償は補償範囲外となります。
その様な賠償を補償してくれるのが、「個人賠償責任保険」です。
ガス爆発で近隣の建物に損害を与えてしまった場合や、水漏れで階下に与えた損害まで、他者に対して起こしてしまった損害賠償を幅広くカバーできます。
ただしこの「個人賠償責任保険」は借りている戸室に対する損害賠償の補償はされないので「借家人賠償保険」と「個人賠償責任保険」双方に加入しておくと安心です。

 

最後に

火災保険は「建物」と「家財」双方にそれぞれ保険をかけることになります。
建物のみが対象となる保険に加入していた場合、テレビや家具などの家財は補償の対象にはなりませんのでご注意ください。
これから出店される方は、是非保険屋さんとよく話し合って保険の種類や賠償範囲、そして金額を決めていってくださいね。

 

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