はじめまして。テナント仲介サービスTEMPOLYの井関です。TEMPOLYでは普段、都内を中心に、 毎月400~500件の物件情報データ更新を行い、常時掲載している2000件以上の物件情報の中から様々なオーナーさんの条件に合う物件探しを支援しております。
独自の人流データや商圏分析データに強みのあるTEMPOLYでは、家賃や坪数だけで判断せず、適正家賃か、エリアの人流はどうか、など商圏の動きもセットで見て、勝ち筋があるかを一緒に検討しています。
「渋谷に出店したいけど、家賃が高すぎて手が出ない…」
「道玄坂と奥渋、ウチの店ならどっちが正解?」
そんなご相談を、日々本当によくいただきます。渋谷は通り一本入るだけで、家賃も客層もガラリと変わる街だからです。
この記事では、TEMPOLYが独自に集計した渋谷駅周辺の「実際の募集賃料データ」をもとに、主要6エリア(宇田川町・神南、奥渋・松濤、円山町・神泉、道玄坂、渋谷駅東口、桜丘町)を徹底比較します。
「なんとなく高い」というイメージではなく、「このエリアのこの階なら、坪単価◯万円」という具体的な相場を知ることで、根拠を持って出店エリアを選べるようになります。
【結論】あなたの業態はどこ?渋谷6エリアの「向き・不向き」判定
まずは結論から。業態ごとに狙うべきエリアは明確に分かれます。
ランチ中心業態(定食・カフェ・麺類)
おすすめは「渋谷駅東口」と「宇田川町・神南」の2択です。
渋谷駅東口: オフィスワーカーと乗り換え客のランチ需要が圧倒的です。
宇田川町・神南: 買い物客・観光客が多く、集客力は最強クラスです。
1階は坪単価3.7万円〜4.8万円と高額ですが、2階に上がると2万〜3万円台まで下がります。「視認性の良い2階」を狙うのが家賃を抑えるコツです。
居酒屋・バー業態(夜主体)
夜の集客をメインにするなら、「道玄坂」と「円山町・神泉」が中心候補です。
道玄坂: 1次会から2次会まで、一晩中人が回遊しています。
円山町・神泉: 深夜帯の飲食・バー需要が非常に強く、朝まで営業する業態に最適です。
地下1階〜3階の物件が豊富です。2階以降なら坪単価2万円台中盤で探せるため、家賃と売上のバランスが取りやすいエリアです。
カフェ・サロン・物販(世界観重視)
「わざわざ行きたい店」を目指すなら、「奥渋・松濤」と「桜丘町」です。
奥渋・松濤: 感度の高い生活者や、落ち着いたカフェを好む層が集まります。
桜丘町: 渋谷の中では比較的落ち着いており、隠れ家サロンや小規模飲食に向いています。
中心部より坪単価が抑えめで、静かな環境が手に入ります。空中階(2階以上)なら坪単価2万円前後の物件も見つかります。
テイクアウト・立ち飲み(高回転・小箱)
「宇田川町・神南」「道玄坂」「渋谷駅東口」の3エリアで、人通りの多い場所を狙います。
坪単価は高いですが、10坪以下の小箱や、地下1階・2階の狭小物件なら総賃料を抑えられます。「回転数」で家賃を回収できるエリアです。
この記事の賃料データの見方(エリア定義と算出条件)
ここからは詳細なデータを見ていきますが、その前に前提条件を整理します。
●対象データ
TEMPOLYが保有する渋谷駅周辺の募集賃料データ
●価格表記
共益費込みの「坪単価(1坪あたりの月額賃料)」
●注意点
「募集賃料」ベースです。 実際の契約時には、交渉によりこれより安くなる可能性があります。あくまで平均値です。 物件のスペックにより前後はあるため、「相場の目安」としてご覧ください。
渋谷駅周辺の「人の流れ」と「需要」の基礎知識
詳細なエリアレポートに入る前に、渋谷の「人の動き(需要)」をざっくり押さえておきましょう。
渋谷駅東口
平日昼のランチ需要と、夕方の帰宅前需要が安定しています。逆に、深夜の飲食需要はそこまで強くありません。
宇田川町・神南
若者の買い物・エンタメ目的が多く、平日よりも週末に人が爆発的に増えます。昼から夜まで絶え間なく人が動きます。
道玄坂 / 円山町・神泉
「夜の街」です。1次会・2次会・3次会と、深夜遅くまで飲食需要が続きます。特に金・土の夜は眠りません。
奥渋・松濤 / 桜丘町
住宅街とオフィスが混ざるエリア。「通りすがり」の集客よりも、「目的来店(SNSを見て来るなど)」がメインになります。
【エリア別詳細】渋谷6エリアの賃料相場とおすすめ業態
ここからが本題です。6つのエリアごとに、階数別のリアルな賃料相場を公開します。
1. 宇田川町・神南エリア:若者が集まるトレンド中心地
渋谷の代名詞とも言える、若年層や観光客が最も多いエリアです。路面店の競争率は激しいですが、空中階にはチャンスがあります。
| 階数 | 平均坪単価 | 参考物件データ数 |
| B1階 | 約3.53万円 | 24件 |
| 1階 | 約4.79万円 | 67件 |
| 2階 | 約3.11万円 | 38件 |
| 3〜4階 | 約2.4万円台 | 57件 |
| 5〜9階 | 約2.3〜2.7万円 | 90件以上 |
解説
1階は坪単価約4.8万円と突出して高いですが、2階に上がると約35%安くなります。2階以上でも集客できる「ブランド力」や「SNS発信力」があるなら、上層階が狙い目です。
向いている業態
単価高めのレストラン・ビストロ(目的来店)、世界観重視のアパレル・古着屋、若年層向けの美容室・ネイルサロン
2. 奥渋・松濤エリア:感度の高い「目的来店」が狙える街
センター街の喧騒を抜けた先にある、落ち着いたエリアです。「奥渋(オクシブ)」ブランドが確立されており、感度の高い大人が集まります。
| 階数 | 平均坪単価 | 参考物件データ数 |
| B1階 | 約2.24万円 | 2件 |
| 1階 | 約3.49万円 | 11件 |
| 2〜3階 | 約2.1〜2.3万円 | 5件 |
| 4〜6階 | 約2.0〜2.6万円 | 3件 |
解説
宇田川町に比べると1階も安くなりますが、それでも3.5万円前後です。特筆すべきは2階以上の安さ(2万円台前半)。静かな環境を活かした隠れ家店舗に適しています。
向いている業態
こだわりのカフェ・ベーカリー・コーヒースタンド、アート色の強い雑貨店・ライフスタイルショップ、予約制の美容室・プライベートサロン
3. 円山町・神泉エリア:深夜まで眠らない大人の飲食街
ライブハウスやクラブが多く、夜から深夜にかけての回遊性が抜群に高いエリアです。神泉駅に近づくほど、落ち着いた名店が増えます。
| 階数 | 平均坪単価 | 参考物件データ数 |
| B1階 | 約1.82万円 | 1件 |
| 1階 | 約3.91万円 | 20件 |
| 2〜3階 | 約2.6〜2.9万円 | 23件 |
| 4〜5階 | 約2.1〜2.4万円 | 13件 |
解説
1階は約3.9万円と高水準ですが、2〜3階が2万円台後半で豊富にあります。夜の飲食ビルとしての認知度が高いため、空中階でもフリー客(飛び込み)が期待できる貴重なエリアです。
向いている業態
バー・ダイニングバー・ワインバー、ライブ後の打ち上げ需要を狙う居酒屋、深夜営業のレストラン
4. 道玄坂エリア:圧倒的な回遊性を誇る「夜のメイン通り」
渋谷駅から直結する道玄坂は、昼夜問わず人が途切れません。ビルイン物件(空中階・地下)の選択肢が最も多いエリアです。
| 階数 | 平均坪単価 | 参考物件データ数 |
| B1階 | 約2.55万円 | 24件 |
| 1階 | 約4.57万円 | 57件 |
| 2階 | 約2.94万円 | 32件 |
| 3〜5階 | 約2.5万円前後 | 91件 |
| 6〜9階 | 約2.3〜2.4万円 | 67件 |
解説
1階は宇田川町同様に高額ですが、地下1階(約2.5万円)と2階(約2.9万円)のコスパが優秀です。看板さえしっかり出せれば、路面店並みの集客力を、路面店の半額近い家賃で確保できます。
向いている業態
1次会需要の居酒屋・焼肉店、2次会・3次会狙いのバー・スナック・カラオケ、始発待ち需要を取り込む24時間営業店
5. 渋谷駅東口エリア:オフィスワーカーの胃袋を支える街
ヒカリエや渋谷スクランブルスクエアなど、大型オフィスビルに隣接するエリア。平日のランチ需要はここが最強です。
| 階数 | 平均坪単価 | 参考物件データ数 |
| B1階 | 約3.47万円 | 28件 |
| 1階 | 約3.74万円 | 84件 |
| 2階 | 約2.41万円 | 35件 |
| 3〜9階 | 約2.0〜2.2万円 | 174件 |
解説
1階(約3.7万円)とB1階(約3.5万円)の差が小さく、地下も人気があることがわかります。一方で2階になると一気に2.4万円まで下がるため、ランチ回転率重視なら2階以上が利益を出しやすい構造です。
向いている業態
平日ランチ+夜のちょい飲み居酒屋、定食屋・中華・ラーメン、テイクアウト需要のある弁当・惣菜店
6. 桜丘町エリア:再開発で注目の「落ち着いた渋谷」
駅近ながらも坂の上に位置し、喧騒から離れた独自の雰囲気があります。再開発が進んでいますが、まだ割安な物件が見つかる穴場です。
| 階数 | 平均坪単価 | 参考物件データ数 |
| 1階 | 約2.09万円 | 2件 |
| 2階 | 約2.00万円 | 2件 |
| 4〜8階 | 約1.4〜2.4万円 | 数件 |
解説
サンプル数が少ないためブレがありますが、1階でも坪単価2万円程度から狙える可能性があります(渋谷中心部の半額以下)。「知る人ぞ知る店」を作るなら最高の立地です。
向いている業態
隠れ家サロン・整体・クリニック、近隣オフィス向けの落ち着いたカフェ、地域密着型の小規模飲食
【一覧表】エリア別の坪単価・需要イメージまとめ
ここまでの内容を、比較しやすい一覧表にまとめました。
| エリア名 | 1階 平均坪単価 | 2階 平均坪単価 | 昼の需要 | 夜の需要 |
| 宇田川町・神南 | 約4.79万円 | 約3.11万円 | ◎(週末・観光) | ◯(平日も安定) |
| 奥渋・松濤 | 約3.49万円 | 約2.14万円 | ◯(静か) | ◯(落ち着いた夜) |
| 円山町・神泉 | 約3.91万円 | 約2.63万円 | △(場所による) | ◎(深夜まで強い) |
| 道玄坂 | 約4.57万円 | 約2.94万円 | ◯(立地次第) | ◎(朝まで強い) |
| 渋谷駅東口 | 約3.74万円 | 約2.41万円 | ◎(平日ランチ) | ◯(仕事帰り) |
| 桜丘町 | 約2.09万円 | 約2.00万円 | ◯(生活動線) | △(静かな夜) |
【業態別】失敗しないテナント選びの判断ポイント
「自分の店ならどこを選ぶべきか?」を迷わないための、具体的な判断基準を紹介します!
ランチ中心業態の判断軸
平日のランチ売上で家賃を回収するモデルなら、以下を確認してください。
A. 徒歩5分圏内にオフィスビルや学校があるか?
B. 1階にこだわるか、「2階で家賃を下げて看板で呼ぶ」か?(東口なら2階で坪1.3万円も下がります)
C. テイクアウトならお弁当販売ができる「店前のスペース」や「窓」があるか?
居酒屋・バー業態の判断軸
夜の売上がメインなら、以下の視点で選びます。
時間帯: 終電後も営業するか?(するなら円山町・道玄坂一択)
導線: 2次会利用を狙うなら、1次会エリア(居酒屋ビル)からの流れがあるか?
看板: 空中階・地下の場合、「袖看板」が目立つ位置に出せるか?
カフェ・物販・サロン業態の判断軸
世界観や滞在価値を売るなら、以下がポイントです。
内装費: 家賃を抑えた分(奥渋・桜丘など)、内装にお金をかけて世界観を作れるか?
静けさ: ターゲット顧客は「賑やかな場所」と「隠れ家」、どちらを好むか?
目的来店: 駅から遠くても「SNSを見て来てくれる」コンテンツ力があるか?
よくある質問
Q. 渋谷では、地下1階でも集客できますか?
A. 可能です。ただし「通り」を選んでください。道玄坂やセンター街のような「人通りの多い通り」沿いなら、地下でも看板次第で十分集客できます。家賃は1階より2〜4割安くなるため、その分を内装費や広告費に回す戦略は非常に有効です。
Q. ランチ中心の場合、駅近にこだわった方がいいですか?
A. 「駅からの距離」より「人の流れ」が重要です。例えば渋谷駅東口なら駅近が有利ですが、宇田川町なら駅から遠くても「買い物客が流れる通り」であればランチ需要は十分あります。駅距離だけでなく「昼12時にその通りを人が歩いているか」を確認してください。
Q. サロンや物販は、何階までならアリですか?
A. 4階くらいまでは許容範囲です。世界観とSNS集客ができれば、4階までならお客さまは上がってくれます。
ただし、5階以上になると「エレベーター待ち」がストレスになったり、ふらっと来店する客がゼロになったりするため、慎重な判断が必要です。
まとめ:渋谷の物件探しは「坪単価」と「時間帯」で決める
渋谷でのテナント探しで失敗しないポイントは、以下の3点です。
- 坪単価のリアルを知る: エリアと階数で、家賃は倍以上変わります。無理のない階数を選びましょう。
- 勝負する時間帯を決める: ランチで勝つなら東口、深夜で勝つなら円山町。時間帯とエリアをマッチさせます。
- 「路面」に固執しない: 2階や地下でも、看板と導線設計次第で利益は最大化できます。
TEMPOLYでは、今回ご紹介したデータをもとに、「あなたの業態なら、このエリアのこのビルが適正価格です」という具体的なご提案が可能です。
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