店舗開発

店舗の集積と競合の関係[前編]

 

1 類似業種の集積度

前回までの3回のレポート(地価で見る銀座エリア,商業ビルの階層とテナント特性,テナント企業の収益と賃料の関係,)にて、
都心の商業エリアや出店テナントの収益特性についていろいろな角度から考察してきました。

今回は、これらを分析するときにとても悩ましい問題となる
「店舗の集積と競合」について考えてみたいと思います。  

店舗で大きな利益をあげるためには、
誰でもよく知っている繁華性の高い商業エリアに出店したいと考えるのが普通です。

お客は店舗がたくさんあるエリアに集まってくるからですが、
店舗がたくさんあるということは反面、
同じ商品を扱うライバル企業の店舗も出店している可能性が高く、
お客の取り合いが発生することにもなります。

店舗の集積度が高いエリアは、集客力が強く店舗の収益にプラスに働く一方で、
店舗の供給過剰(過当競争)というマイナス面も潜んでいるわけですが、実際の例を見てみましょう。

 

下図は銀座・新宿(西新宿と歌舞伎町を除く)・渋谷・表参道・六本木の5エリアの主要ストリートごとに、
類似する2業種の店舗の集積度(商業ビルの全フロア区画に占めるこれらの店舗の構成比率)の分布を示したものです。
類似業種の例として、飲食店のうち、酒類の提供が主体の<バー系>と<居酒屋系>の2つを対比させています。

 

〇類似2業種のテナント集積度①
(各エリア主要ストリート別の散布図と上位ランキング)

r4-1

 

出典)㈱ゼン・ランドの保有情報をもとに作成

 これを見ると、バー系のテナントについては最多のストリートで25%程度、
居酒屋系のテナントについては20%に満たない程度の集積度となっています。

この散布図では横軸に近い位置に分布するストリートと
縦軸に近い位置に分布するストリートに分布の傾向が分かれていますが、
表で上位10位までのストリート名を見ると、
横軸側(バー系)は銀座や六本木のストリートが多く、
縦軸側(居酒屋系)は新宿や渋谷が多いことがわかります。

 

 類似の業種と言いつつも、集積度が高い商業エリアを見ると
傾向がはっきり分かれていますが、さらに詳しく、
これらをビルの階層別で見てみると以下のようになります。

〇類似2業種のテナント集積度②(各エリア主要ストリート別階層別)

r4 図表2

出典)㈱ゼン・ランドの保有情報をもとに作成

 

 これら2業種が最も多く集積している地下フロアでは、
バー系・居酒屋系のそれぞれに偏っているストリートだけでなく、
双方の比率が高くなっているストリートも多く、両者が入り乱れた感じに分布しています。

一方、基本的に物販が多い路面(1階)や2階の低層部、
中層の3~5階では相対的に見てバー系の比率が高いストリートが多くなっています。

これが高層の6~9階になると居酒屋系の比率が高いストリートが増え、
10階以上になると逆に居酒屋系の店舗はほとんどなくなってしまいます。

 

 このように、バー系の店舗と居酒屋系の店舗は、
類似の業種だけに同じようなエリア・ストリートへの出店を指向しているように見える側面だけでなく、
ある種の棲み分けのような分布を示している側面もあります。

この背景をより深く考えるため、次回の記事にて
バー系と居酒屋系の店舗の類似点ではなく、相違点の方に着目します。 
 

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