はじめまして。テナント仲介サービスTEMPOLYの井関です。TEMPOLYでは普段、都内を中心に、 毎月400~500件の物件情報データ更新を行い、常時掲載している2000件以上の物件情報の中から様々なオーナーさんの条件に合う物件探しを支援しております。独自の人流データや商圏分析データに強みのあるTEMPOLYでは、家賃や坪数だけで判断せず、適正家賃か、エリアの人流はどうか、など商圏の動きもセットで見て、勝ち筋があるかを一緒に検討しています。
2026年現在、店舗内装資材の価格は数年前の1.4倍に高騰しており、 初期費用を抑えるための「造作譲渡」の活用件数は過去最高を更新しています。
「居抜きなんて、どうせボロい設備を押し付けられるだけだろ」と疑っている方もいるかもしれません。 確かに、プロの目利きなしで飛びつくのは危険です。
そこで、この記事は、初めて店を持つあなたが「賢く資産を見極める経営者」に生まれ変わるために、絶対に盛り込むべき契約書の防衛条項、そしてマル秘交渉テクニックまで、あなたの開業資金をトラブルから守る知識を凝縮しました。
この記事を読み終えれば、浮いた数百万円を最高の運転資金に変え、最高のスタートダッシュを切ることができるはずです。
造作譲渡なら時間とお金を節約できる
「造作譲渡」はこれから開業する人の負担をぐっと下げてくれる契約方法です。この仕組みを知らないまま物件を選ぶと、開店までに想像以上のお金と時間がかかることがあります。店づくりを考えるなら、この「造作譲渡」について必ず押さえておくべきです。
ずばり、造作譲渡とは
造作譲渡とは、一言でいえば、前の店が残した内装や設備をそのまま引き継ぐ契約方法のことです。たとえば、保証金のように一部が戻らない制度ではなく、「設備ごと店を受け継ぐ」という考え方に近いです。
もし譲渡前の店がラーメン店だったら、カウンターやダクトがありますよね。造作譲渡なら、既存のカウンターやダクトをそのまま使用できるので、開業に必要な物資を全て揃えるより、工事期間が短く、かつ費用も抑えられます。内装を一から作ろうと思うと数百万円のコストがかかることもあるので、この差はとても大きいです。
なぜ造作譲渡が広まってきたのか?
最近の物件選びの現場では、造作譲渡を行う店が増えてきています。特に初めて店を出す人や、費用を抑えたい人が選ばれるケースが多いです。店づくりの負担が増している背景には、材料費の値上がり、職人不足、家賃の高止まりなどで、店づくりの負担が年々増えている状況があります。前の店が作った設備をそのまま使って、開店までの時間を短くする。この流れはこれからも広がっていくでしょう。
造作譲渡の注意点
もちろん、造作譲渡にはデメリットもあります。前の物件で使用された機器を使うため、とくに水回りの不具合などは、新品を用意するよりも早く出るケースがあります。また、前の店の悪い評判を引きずってしまう可能性もあります。譲渡について貸主との話がまとまらず、契約が止まることもあるでしょう。確認せずに進めると、追加工事で予想外の出費が出たり、開店が遅れたりすることもあります。
そこで、以降の記事では、造作譲渡の基本から契約で注意すべき点までをまとめました。どの設備を確認すれば安心か、費用の決まり方や支払いのタイミング、貸主の承諾が必要な場面など、実務で困らないための具体的な流れも紹介しています。
この記事を読めば、造作譲渡のリスクやコストを正しく把握できます。契約で迷う場面も減り、開店までの負担を大きく減らせますよ。
造作譲渡を成功させるには?
造作譲渡をうまく使うには、造作譲渡という言葉の意味や市場での立ち位置、経済的なメリットを理解することが大切です。理解不足による契約トラブルを避けるためにも、基本から知りたい方はこちらの記事をご確認ください。
造作譲渡契約書のトラブルを避けるには
物件の取引において、口約束は何の意味もありません。合意内容は必ず契約書に書き込み、効力を持たせる必要があります。ここでは、契約の流れと注意すべきポイントを整理します。
契約の流れ
造作譲渡の成立には、3つの契約を順番に行う必要があります。
- 退去日の確認と原状回復の扱い
貸主と旧テナントで、退去日と原状回復義務をどうするかを決めます。新テナントに引き継ぐかどうかもここで確認します。 - 新しい賃貸契約の締結
貸主と新テナントで入居の権利を確定します。 - 造作譲渡契約
旧テナントと新テナントで、設備や内装の売買条件を決めます。
これらの契約は、ドミノのように順番につながっています。造作譲渡契約には、「条件付きで効力が出る」と書きます。「この契約は、買主と貸主の賃貸契約が成立した場合に効力を持つ」とすることで、賃貸契約が成立しなければ支払い済みの手付金も戻ります。
引き渡し後に設備が壊れたときの責任について
造作譲渡で最も揉めやすいのは、引き渡し後に設備が壊れたときの責任です。中古品の譲渡契約では、売り手は現状有姿(そのままの状態)での引き渡しを主張し、瑕疵担保責任(売買した物に後から欠陥が見つかった場合の責任)を負わないとするのが一般的です。買い手にとっては大きなリスクです。
こういう時は、妥協案として「引き渡し後7日間だけ初期不良の修理を売り手が行う」といった条項を入れると、最初のトラブルを避けやすくなります。
譲渡対象は文書で明確にしましょう
契約書には、譲渡する資産リストを必ず添付します。「別紙目録の通り」と明記することで、何を引き渡すかをはっきりさせます。また、契約にない物が残っている場合、買い手が処分できること、処分費は売り手が負担することを入れると、ゴミや不要物のトラブルを避けられます。
原状回復の範囲をはっきりさせる
造作譲渡を受けると、将来退去する際にその設備をどう扱うか、つまり原状回復の範囲を引き継ぐことになります。契約書には、スケルトンに戻すのか、一部残してよいのかを明記しておくことが大切です。曖昧にすると、退去時に貸主と「どこまで壊すか」で争いになります。
運営の準備と開業後の管理
契約を結ぶのはゴールではなく、スタートです。引き渡しからオープンまでの間に、店を動かすための準備を整えることが大切です。
引き渡し当日の流れ
引き渡し日には、次の手順で最終確認を行います。
- 現地で立ち会い
譲渡する人、譲り受ける人、不動産業者が現場に集まり、目で見て確認します。 - 機器の動作確認
冷蔵庫やエアコン、厨房機器のスイッチを入れて動くか確認します。契約時と比べて新しい故障や持ち出しがないかもチェックします。 - 鍵と書類の受け取り
店舗の鍵、取扱説明書、保証書、検査証、業者の連絡先リストなどを受け取ります。 - メーター確認
電気・ガス・水道のメーターを確認し、料金の負担区切りをはっきりさせます。
許可や届け出の手続き
設備は譲渡されても、営業許可は自動で引き継げません。新しく申請し直す必要があります。
- 保健所(飲食店営業許可)
設備がそのままでも、名前は変えられません。事前に相談し、必要に応じて手洗い器のサイズや区画の修正を行います。 - 消防署(防火対象物使用開始届)
テナントが変わると届出が必要です。防火管理者の選任も必要になります。 - 警察署(深夜営業や接待を伴う店の場合)
バーやスナックなどで深夜営業する場合は届出が必要です。審査に約2か月かかるため、早めに手続きを始めます。
故障への備え
中古の設備はいつ壊れてもおかしくありません。事前に準備をしておくことが大切です。
- 業者リストの作成
水漏れや冷蔵庫の故障など、トラブルごとに信頼できる業者をまとめて店内に掲示します。 - 修理費の積立
毎月売上の1〜2%程度を修理費として積み立てておきます。これにより、急な故障でも慌てずに対応できます。
造作譲渡料の相場は?
造作譲渡料には決まった値段はありません。売り手と買い手の状況や交渉次第で価格が変わります。ただし、目安の相場や費用の内訳について理解しておきたい人はこちらの記事で解説しているので、ぜひ、ご覧ください。
造作譲渡の契約書には落とし穴がいっぱい
造作譲渡契約書は、単なる売買の証明だけでなく、設備を固定資産として計上し、減価償却を行うための税務上の重要書類でもあります。そのため、中古設備ゆえの故障リスクや、複雑な契約による法的・経済的なリスクが潜んでいます。
重要なのは、メリットに目を奪われるだけでなく、リスクを最小化する準備を怠らないことです。
- 内見時には「使えるか」だけでなく、「寿命はいつか」と「権利は誰のものか」を見極める。
- 価格交渉は「言い値」ではなく、「中古市場価格」と「原状回復費用」を武器に論理的に行う。
- 契約書には、「初期不良の保証期間」と「将来の原状回復範囲」を必ず明記し、自分を守る。
無理に全てを自力で完璧にしようとせず、リスクを整理し、必要なチェックを順序立てて行うことが、安心で健全な店舗スタートにつながります。造作譲渡の実務は、契約内容や権利関係の確認など、個人では判断が難しい部分が多く残ります。
TEMPOLYでは、店舗物件専門の不動産業者として、契約書の作成や、先方が作成した契約書の内容確認を行っています。何もわからないままサインして数百万円の損をしてしまう前に、造作譲渡の契約についてお困りのことがあれば、ぜひTEMPOLYにご相談ください。
