開業・出店

【都内版】軽飲食店舗の開業マニュアル|物件探しから契約、許可申請まで徹底解説

はじめまして。テナント仲介サービスTEMPOLYの井関です。

TEMPOLYでは普段、都内を中心に、 毎月400〜500件の物件情報データ更新を行い、常時掲載している2000件以上の物件情報の中から様々なオーナーさんの条件に合う物件探しを支援しております。独自の人流データや商圏分析データに強みのあるTEMPOLYでは、家賃や坪数だけで判断せず、適正家賃か、エリアの人流はどうか、など商圏の動きもセットで見て、勝ち筋があるかを一緒に検討しています。

都内で軽飲食店を開業しようとするオーナーさんから、よく聞かれるのが「この物件、カフェならOKって書いてあるけど、どこまで料理していいの?」という質問です。「都内は家賃が高いし、制限も多そう。本当に自分にできるかな?」と不安に感じるかもしれません。でも、ご安心ください。実は「正しい段取り」さえ知っていれば、そのハードルはぐっと低くなります。

そこでこの記事では、都内で軽飲食店を出店したい方向けに、

・物件探しと契約で押さえるべきポイント

・各種許可申請と行政手続きの進め方

・各タイミングでどの専門家に頼るべきか

を、具体的に整理して、あなたの夢を実現させるサポート役として解説させていただきます。

 失敗しない「物件」の探し方と契約前チェック

1-1. まず押さえる:軽飲食と重飲食の違い(実務上の判断軸)

飲食テナントの現場で言う「軽飲食」「重飲食」は、法律に明確な定義がある言葉ではありません。ですが、物件の可否・工事費・近隣トラブルの起こりやすさに直結するため、最初に“実務上の判断軸”を揃えておくのが安全です。

判断軸は大きく3つ。油・煙/臭い/排水となります。

  • 油・煙:フライヤーや強火の炒め物が中心か(強い排気が必要か)
  • 臭い:上階が住居のビルなどで、匂いがクレームになりやすい業態か
  • 排水:油分を含む排水が多く、グリストラップ容量が大きくなるか

軽飲食の代表例は、カフェ、ベーカリー(簡易調理中心)、スイーツ・軽食のテイクアウトなど。IHや小型機器で済むことが多く、排気・排水の負荷も比較的軽いケースが中心です。

一方、揚げる・炒める・煮込むを日常的に行う業態(居酒屋、焼肉、ラーメン、唐揚げ、定食など)は、排気・防火・排水が一気に重くなります。ここを曖昧にしたまま物件を押さえると、「契約はできたのに、工事が通らない/近隣合意が取れない」という最悪のパターンになりがちです。

1-2. 物件検索の勝ち筋は、立地より先に「前提条件」を固める

物件探しでつまずく人ほど、「まず良い立地を押さえたい」から入ります。気持ちは分かるのですが、軽飲食は“立地より先に”前提条件を固めたほうが、最終的な成功確率が上がるのです。

理由はシンプルで、軽飲食は「居抜きの当たり物件」が出るエリアが限られており、条件がブレると決断が遅れ、相場感も育たないからだと言えます。

まずは、次の5点をしっかり確認しておくと、物件探しがとても楽になります。

  • 営業時間:夜型にするのか、昼型にするのか(終電後までやるかも含む)
  • 主力メニュー:火と油をどこまで使うのか(フライヤー有無)
  • 席数と坪数:何席で回すのか(客単価・回転数とセット)
  • 提供形態:店内飲食中心か、テイクアウト中心か、デリバリー有無
  • ターゲット:近隣ワーカーか、住宅客か、観光客か(時間帯が決まる)

これが決まると、必要な設備(排気・給排水・電気容量)、許可の難易度、そして“物件の当たり前の家賃幅”が自動的に見えてきます。

例えば「昼カフェ中心でテイクアウトがメイン」なら、家賃の高い駅近より、SNSで集客できる2階席の方が利益を残しやすくなります。逆に「夜の滞在が長い」なら、騒音・近隣クレーム・共用部の運用ルールまで含めて夜型に耐えるビルを選ぶ必要があります。

1-3. 「居抜き」か「スケルトン」か:初期費用とスケジュールの分岐点

予算を抑えて早くオープンしたいなら「居抜き」の選択肢は有力です。ここでは、後悔しないための選び方のポイントを絞ってお伝えします。

項目

居抜き物件

スケルトン物件(Skeleton)

初期費用

安価(内装・設備費を大幅削減できる)

高額(全て新規投資)

開業スピード

早い(最短数ヶ月で開業可能)

遅い(設計・施工に時間がかかる)

自由度

低い(前テナントの設備・レイアウトに制約される)

高い(理想のコンセプトをゼロから実現可能)

契約リスク

定期借家の場合、再契約可否や残存期間の確認が必須

比較的低い(条件が明確なことが多い)

原状回復義務

承継範囲や保証金償却との関係が複雑。事前確認が必要

契約終了時に躯体状態まで戻す

 

居抜きは「安い」だけではなく、開業スピードが速いのが最大の武器です。居抜きを活用して1ヶ月早くオープンできれば、その分だけ早く売上が立ち、資金繰りに余裕が生まれます。

ただし居抜きは、設備や図面の“承継範囲”が曖昧だと揉めます。契約前に誰がどこまで原状回復するのか(スケルトン(内装設備等全て撤去し構造躯体あらわしの状態)に戻すのか、ダクト、グリストラップ、看板、エアコンなど一部残置が認められるのか)を文書で確定させましょう。さらに、引継いだ設備の「年式」「メンテ履歴」「故障時の負担」を確認し、最低でも開業後1年の故障リスクを見込んで資金計画を組むのが現実的です。

1-4. 商業テナント契約の初期費用:ここで資金ショートが起きやすい

軽飲食でよくある資金ショートは、「内装見積が膨らんだ」ではなく、契約時の初期費用を甘く見ていたパターンです。都内の商業テナントは、初期費用の金額が大きく、しかも“返ってこないお金”も混じります。

費用項目

目安相場(賃料比)

解説

保証金・敷金

6〜12ヶ月分

原則一括。償却条件と原状回復範囲は必ず確認。

礼金

1〜2ヶ月分

返還されない謝礼金。

前家賃

1ヶ月分 ※賃料発生日次第では日割り賃料になる場合や、1ヶ月+日割りになる場合あり。

初月分(または当月分)を契約時に前払い。

仲介手数料

1ヶ月分

不動産会社への報酬。

保証会社利用料

賃料総額の100%(初回)

※申込者の与信次第では下回る場合もあり。

連帯保証人に代わる保証。加入義務化が増加傾向。

 

ここに加えて、厨房機器の購入費、造作譲渡代、看板、什器、POS、初期仕入れ、求人費なども同時期に発生します。契約時点で「現金がどれだけ残るか」を逆算して、工事費と運転資金(少なくとも3〜6ヶ月分)の両方が確保できるかを必ず見てください。

そしてもう一つ。見落としがちなのが、ビル側指定の「B工事/C工事」です。たとえば空調・ダクト・防災設備・サイン工事などが指定業者固定の場合、相場より高くなることがあります。ここは契約前の“見積提示タイミング”まで含めて確認しましょう。

1-5. 売上が立つ構造を先に作る:客単価・回転・稼働日の3点セット

最後に、物件探しで見落とされがちなのが「売上の構造」です。良い物件は、家賃が高いことが多い。だからこそ、数字の前提がないと“雰囲気で契約”してしまいます。

軽飲食の基本は、次の式です。

月商 =(客単価)×(1日客数)×(営業日数)

そして、1日客数はさらに

1日客数 =(席数)×(回転数)×(稼働率)

ここまで分解すると、「この物件で現実的に何人入るのか」が読めます。席数が少ないならテイクアウト比率を上げる、回転が低いなら客単価を上げる、稼働率が低いならモーニング/テイクアウト/SNS導線を強める。物件の良し悪しは“数字に落ちた瞬間”に見えるようになります。

ここでおすすめなのは、開業前に「平日昼」「平日夜」「土日昼」「土日夜」の4パターンで、現実的な客数の上限を仮置きすること。そこから逆算すると、席数の必要性や、テイクアウト窓口の優先度、スタッフ人数まで同時に決まってきます。

1-6. 契約書で必ず見るべき条項:トラブルの9割はここにある

テナント契約は、開業後に変更できない“ルール”を確定させる行為です。よく揉めるのは、次の条項です。

  • 用途制限:軽飲食として契約しても、実運用が「重い」扱いになると是正を求められることがあります
  • 排気・ダクト:屋上まで上げられるか、外壁貫通は可能か、経路は共用か専有か
  • 看板・サイン:設置場所、サイズ、照明の可否、指定業者の有無
  • 原状回復:どこまで戻すのか(スケルトン渡し)
  • 契約形態:普通借家か定期借家か(定期借家は更新がない前提で資金回収を組む)
  • 中途解約:解約予告期間と違約金(“6ヶ月前予告”などは珍しくありません)
  • 営業時間・音の制限:ビル規約で深夜営業や音出しが制限されていないか

特に「定期借家」×「初期投資が大きい」の組み合わせは要注意です。再契約が確約されない以上、投資回収を“契約期間内”で完結させる必要があります。

保健所・消防・警察の許可申請ロードマップ

2-1. まず結論:軽飲食は「保健所×消防」が軸。警察は“条件付き”で出てくる

軽飲食の開業で、必ず必要になるのは保健所(飲食店営業許可)です。加えて、内装工事や用途の変更を伴う場合は、消防署への届出がほぼ確実に絡みます。

一方で、警察(公安委員会)への手続きは、全ての軽飲食に必要なわけではありません。

ここを最初に切り分けておくと、「いつ何を出せばいいか」のロードマップが一気に整理できます。

2-2. 保健所:検査日が実質の締切。図面相談→申請→検査→許可交付

保健所の飲食店営業許可は、書類提出だけでは終わりません。施設(厨房・手洗い・区画・床壁・換気など)が基準を満たしているか、現地で検査を受けます。

例えば渋谷区の案内では、原則として営業許可日は検査の翌開庁日付け、許可書とステッカーの受け取りは検査後5開庁日以降とされています。つまり「検査日=ほぼ締切」です。

  • 物件決定前:保健所へ事前相談(業態・メニュー・厨房機器の想定を持参)
  • 内装設計中:平面図・設備配置図の段階で、担当者にチェックしてもらう
  • 工事終盤:検査日の予約を確定(直前だと空きがないことがあります)
  • 工事完了後:施設検査→許可日付→許可書受領→営業開始

ポイントは「図面の段階で潰す」こと。完成してからNGが出ると、やり直しコストが大きくなります。

また、食品衛生責任者の設置が必要になる点も、スケジュールに組み込んでください。取得済みでない場合、講習会の開催日程で「先に詰まる」ことがあります(自治体・団体で日程が異なります)。

2-3. 消防署:工事をするなら「7日前」がキーワード(使用開始届/工事等計画届)

都内でテナントを借りて工事を行い店舗をオープンさせる場合、東京消防庁は「使用開始日の7日前まで」に防火対象物使用開始届出書、さらに修繕・模様替え・間仕切り変更等を行う場合は「着手する日の7日前まで」に防火対象物工事等計画届出書が必要と案内しています。

ここが遅れると、オープン日がズレる原因になります。内装会社任せにせず、オーナー側も“7日前の締切”をスケジュールに入れてください。

加えて、消防設備(誘導灯、非常灯、自動火災報知設備など)の改修が必要になると、機器調達や工事日程が読みづらくなります。物件申込み直後に一度、防災業者を現調に入れると、後工程が安定するのです。

2-4. 【55日ルール】警察手続き:必要な業態だけ、早めに逆算する

いわゆる「55日ルール」は、風俗営業の許可に関する目安の処理期間として、55日以内(行政庁の休日は含まない)と示されることがある、という文脈で語られます。警視庁の公開資料でも、標準処理期間は定められないが「55日以内を目安」とする旨が記載されています。

ただし重要なのは、軽飲食の全てに当てはまる話ではない、という点です。普通のカフェ営業だけなら、55日ルールがスケジュールの中心になることは基本的にありません。

一方で、次のようなケースは警察手続きが開業スケジュールを決めます。

  • 接待を伴う形態に該当する可能性がある(風営法1号営業許可が必要になり得る)
  • 店内で遊興性の高い営業を行う(業態によっては特定遊興飲食店など)
  • 深夜0時以降、酒類提供がメインになる(深夜酒類提供飲食店の届出)

深夜酒類提供飲食店の届出は届出制ですが、一般に「営業開始日の10日前まで」に届出が必要と整理されることが多いので、こちらも逆算が必要です。

結論としては、「警察が絡む可能性があるなら、物件を決めた直後に一度、所轄へ相談する」。これが一番コストが安いです。

2-5. 実務の最短ルート:設計と申請を“並行”で走らせるチェックリスト

最後に、現場で効くチェックリストを。これを並行タスクとして回すと、開業までのロスが一気に減ります。

  • メニュー確定(火・油・臭い・排水の負荷を明文化)
  • 設備要件確定(電気容量/ガス/給排水/排気)
  • 保健所の事前相談(図面の一次チェック)
  • 消防署の事前相談(用途・避難・設備の確認)
  • 工事等計画届/使用開始届(7日前締切をカレンダーに固定)
  • 検査日予約(保健所)→工事工程表に組み込む
  • 警察手続きが必要な場合は、55日・10日前を逆算(該当業態のみ)

2-6. スケジュール例:最短で開けたい人の「逆算テンプレ」

最後に、最短ルートで動く場合の“ざっくり逆算”を置いておきます(実際は物件・工事規模で変動します)。

タイミング(目安)

やること

T-8〜10週

物件選定・条件交渉/内装の概算見積/保健所・消防の事前相談(可能なら)

T-6〜8週

契約→詳細設計→発注/必要なら防災業者の現調

T-3〜6週

工事着手(消防の工事等計画届は“着手7日前まで”を厳守)

T-1〜2週

工事仕上げ/保健所の検査日確定→受検

T-0

許可日付・許可書受領→営業開始(深夜届等がある場合はさらに逆算)

 

このテンプレの狙いは、「検査日」と「7日前締切」を軸に工程を固定することです。オープン日だけ先に決めてしまうと、どこかで無理が出ます。工程表の中心に“締切”を置く。ここがプロの段取りです。

各タイミングでどの専門家に頼るべきか

3-1. まずは役割分担:誰に何を頼むと“失敗が減る”のか

軽飲食の開業は、オーナーが全部抱えると、必ずどこかで漏れます。ここでは「何を誰に頼むと、失敗が減るか」を役割で整理します。

  • 不動産仲介(テナント仲介):物件選定、条件交渉、用途・設備条件の確認、契約リスクの洗い出し
  • 設計・内装:厨房動線、客席レイアウト、給排気・電気容量の設計、工事管理
  • 行政書士:深夜酒類提供届、風営関連の許可、各種届出書類の作成・代理提出
  • 消防設備士/防災業者:自動火災報知設備、誘導灯、消火器などの設計・設置・届出支援
  • 税理士:資金繰り、創業融資、会計設計、消費税・インボイスの判断
  • 社労士:雇用契約、就業規則、労務リスク(シフト・残業・社会保険)

ポイントは「不動産・設計・行政」を分断しないことです。例えば、メニューの負荷(油・煙・臭い)が強いのに、住居上階の物件を契約してしまうと、行政対応以前に“運営が続かない”状態になります。

3-2. 依頼のタイミング:この順番で呼ぶと無駄が出にくい

おすすめの順番は、次の通りです。

  • 物件検討中:テナント仲介+内装(簡易見積)で「この物件でいくらかかるか」を先に把握
  • 物件申込直後:保健所・消防の事前相談(図面で潰す)
  • 工事開始前:必要なら行政書士を入れて警察手続きを確定(55日/10日前を逆算)
  • オープン前:税理士・社労士で運営の土台(資金繰りと採用)を固める

この順番を外すと、例えば「契約してから初めて厨房設計を考える」「工事が終わってから消防の届け出に気づく」といった、取り返しのつかない遅延が起きます。

3-3. 見積比較のポイント:安さより「抜け漏れ」と「責任範囲」を見る

専門家や業者の見積は、単純な金額比較をすると失敗します。重要なのは、抜け漏れと責任範囲です。

たとえば内装。厨房機器の搬入・配管・電気容量アップ・ダクト・防災工事・サイン工事が、誰の見積に入っているかがバラバラです。見積金額が安いのに、後から「それは別途です」が続くと、結局高くつきます。

チェックするべきは次の3点です。

  • ① 仕様の前提:何席、何メニュー、何機器の想定で見積っているか
  • ② 責任範囲:行政対応(図面修正・届出)まで面倒を見るのか/見積に含むのか
  • ③ 追加の条件:ビル指定工事(B工事等)が発生した場合の扱い

この3点が揃うと、見積は“比較できる形”になります。

まとめ 軽飲食は段取り勝負。スケジュールを握った人が勝つ

軽飲食は、重飲食に比べて工事負荷が軽いぶん、「誰でもすぐ始められそう」に見えます。だからこそ、段取りで差がつきます。

・物件は、立地より先に前提条件を固める
・許可は、保健所×消防を軸に、警察は該当時だけ早めに逆算する
・専門家は、順番と役割を切り分けて“並行”で走らせる

この3つを守れば、無駄な出費と遅延はかなりの確率で避けられます。

もし具体的な物件や計画が決まり始めている方は、この記事でお伝えしたポイントを踏まえたうえで、一度プロに相談してみてください。弊社でも、あなたのやりたいコンセプトや現在の資金状況も含めて丁寧にヒアリングしたうえで、最適な出店戦略と実行ステップをご提案させていただきます! 

 

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