みなさん、こんにちは!
テナント仲介サービスTEMPOLYの井関です。TEMPOLYでは普段、都内を中心に、 毎月400~500件の物件情報データ更新を行い、常時掲載している2000件以上の物件情報 の中から様々なオーナーさんの条件に合う物件探しを支援しております。独自の人流データや商圏分析データに強みのあるTEMPOLYでは、家賃や坪数だけで判断せず、適正家賃か、エリアの人流はどうか、など商圏の動きもセットで見て、勝ち筋があるかを一緒に検討しています。
人生をかけた店舗の開業準備。物件情報を見ているとワクワクしますよね。 でも、いざ気に入った物件の図面を見たとき、「定期借家契約」という文字を見て手が止まってしまったことはありませんか?
「立地は最高だけど『定期借家』って書いてある…これってなに?」
そんな疑問を感じたことはありませんか。
そこでこの記事では、「普通借家」と「定期借家」の決定的な違いから、店舗・オフィスそれぞれの利用シーンにおける「正解」の選び方までを網羅しました。
契約直前まで見落とされがちなリアルなリスクと、あらためて確認しておきたい「特約」について、プロの視点で解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたの手元にある契約書が「有利か、不利か」が明確に見えてくるはずです。一生に一度の大きな決断で後悔しないために、まずはこの記事を読んでみてください。
普通借家契約と定期借家契約の違い
普通借家と定期借家は、一言で言えば「契約の終わり方」が違います。まずは全体像を比較表で整理しましょう。二つの契約の違いを簡単に表にまとめたので、ご覧ください。
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項目 |
普通借家契約 |
定期借家契約 |
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更新の可否 |
あり(法定更新) |
なし(期間満了で自動終了) |
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借主の権利 |
強い:長期継続が保証される |
弱い:期間外の権利が限定される |
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貸主からの退去要求 |
正当事由(+立退料)が必須 |
期間満了で自動終了(再契約は任意) |
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中途解約 |
特約により可能(予告期間が必須) |
原則不可(特約がない場合) |
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賃料相場 |
標準的 |
貸主がリスクヘッジできるため割安になるケースがある |
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契約手続き |
書面契約と事前説明が必須(借地借家法) |
ここからは、細かい違いについて、より詳しく解説します。
普通借家契約=借りる人を守る仕組み
普通借家契約は、借主(テナント)の生活や事業の安定を目的とした日本の借地借家法に基づくスタンダードな契約方法です。借りる側が長く安心して店を続けられるよう作られた契約なので、「この場所で腰を据えて営業したい」という方に向いています。
最大のポイントは、契約期間が終わっても借主が希望する限り契約が続く「法定更新」の仕組みです。貸主が契約を終了させるには、法律上の「正当事由」が必要です。
- 正当事由の例: 建物の老朽化や大規模な自己使用の必要性など。
- 実務上の現実: 単に建物が古いだけでは正当事由として弱く、貸主が退去を求める場合は、引っ越し代や営業補償を含む立退料の支払いが必要となることがほとんどです。この立退料は、場合によっては数百万円〜数千万円にもなります。
長く、安定して事業を継続したい店舗オーナーにとって、最も安心できる契約形態です。
定期借家契約=期間を決めて借りる仕組み
定期借家契約は、あらかじめ決めた期間だけ契約が続き、期間が終われば自動的に契約も終わる仕組みです。更新がないので、貸す側は将来の計画を立てやすくなりますし、借りる側も「この期間で計画を立てる」と安心できます。
契約期間が終わったら再契約が必要
定期借家では、契約期間が終わるとそのまま契約が終了します。もし「もう少し借りたい」と思った場合は、新たに契約を結ぶ必要があります。
ここでポイントなのは、再契約の主導権は貸す側にあることです。過去にトラブルがあった借主との契約は、貸主側の意思で断ることができます。これにより、貸す側は安心してテナントの入れ替えができる仕組みになっています。
契約の説明書類の準備が肝心
定期借家契約は、普通借家契約と違って「法定更新」がないかわりに、契約手続きに以下のようなルールがあります。
- 書面契約:口頭ではなく、必ず紙や電子の契約書を作成する必要があります。
- 事前の説明書面:契約書とは別に、「更新はなく期間満了で終わる」ことを借主に書面で説明する必要があります。
平成24年の最高裁判決では、契約書に「定期借家」と書いてあっても、別の説明書面がなかったため、普通借家契約として認定されたケースがあります。借主が契約内容を知っていたかどうかは関係なく、手続きが正しく行われたかが重要です。実務では契約書とは別に「定期借家契約の説明書」を作り、受領印をもらう運用が徹底されています。
商業用不動産に特化したポータルサイトTEMPOLYでは、定期借家契約に関する説明書類の作成サポートを行っています。契約内容が正しいか不安な場合は、ぜひ一度ご相談ください。
ケーススタディ①店舗契約で注意すべきポイント
店舗契約では、普通借家契約か定期借家契約かの違いで、将来の動きやすさやリスクが大きく変わります。とくに、数千万円の内装工事費(初期投資)を回収できるか、という「投資回収期間」が判断のカギとなります。
定期借家契約は「内装費の償却」が間に合わないリスクがある
飲食店や美容室などは、開業時に数百万円〜数千万円の内装工事が必要ですが、定期借家契約で期間が短く再契約保証がない場合、その期間内に投資を回収できなければ、事業計画が破綻します。
普通借家契約のように更新が保証されていれば、長期的なキャッシュフローを見込めますが、定期借家契約では期間満了で投資回収の機会を奪われるリスクがあります。
「スケルトン返し」と「造作買取請求権の放棄」の重圧
店舗契約では退去時に内装をすべて撤去し、コンクリート打ちっぱなしに戻す「スケルトン戻し(原状回復)」が一般的です。この解体費用は高額になりがちです。
さらに、多くの契約書には、借主が貸主に対して設置した設備を時価で買い取るよう請求できる「造作買取請求権」を放棄する特約が盛り込まれています。
内装に大きな投資をする場合は、定期借家契約を選ぶなら、契約前に「再契約の予約」特約などで期間を確保するか、高額な解体費用をあらかじめ事業計画に組み込んでおく必要があります。
「スケルトン戻し」と「居抜き売却」の詳細な違いについては、こちらの記事で解説しています。あわせてご覧ください。
ケーススタディ②オフィス契約で注意すべきポイント
都市部のオフィスビル(特に大規模ビル)では、ビルの再開発や資産運用のため、定期借家契約が多く利用されています。オフィス契約で最大のリスクとなるのが、撤退時の中途解約です。
定期借家契約は中途解約不可!高額の違約金がかかるケースも
定期借家契約は、期間固定が原則であるため、原則として契約期間中の解約ができません。これは企業の財務リスクに直結します。
もし事業縮小や移転で途中で撤退したい場合、特約がないと、残りの期間分の賃料を違約金として請求される可能性があります。
中途解約の違約金は、残存期間分の賃料全額、または一般的に半年〜1年分の賃料相当額が請求されるケースが多いです。例えば、月100万円の賃料で残存期間が1年の場合、最大1,200万円を請求されるリスクがあります。
オフィス契約を結ぶ際は、「中途解約権」の特約が契約書に盛り込まれているか、必ず確認してください。
理想的な特約は、「6ヶ月前の書面予告で、違約金なしに中途解約できる」という条項です。この特約がない契約は、企業のキャッシュフロー管理上、大きな問題となります。
契約書でここを見逃すな! トラブル回避のチェックポイント
契約実務を担当する方は、書面や手続きのちょっとした違いが大きなトラブルにつながることを知っておく必要があります。ここでは、リスクを理解した上で、契約を有利に進めるために、契約書で必ずチェックすべき具体的な3つの特約を紹介します。
①「再契約の予約」条項(定期借家のみ)
定期借家契約の更新不安を解消するため、契約書に「再契約の予約」を盛り込むよう交渉しましょう。
【条項例】
「契約期間満了時に、借主が契約違反(賃料滞納など)をしていなければ、貸主は優先的に再契約に応じるものとする。」
この条項があれば、安定した店舗運営を続けたいという借主のニーズに応えつつ、貸主も不良テナントを排除できるため、実務上、採用されるケースが増えています。
②「説明義務」は果たされているか
先述のとおり、定期借家契約においては、契約書とは別の「定期借家契約の説明書」を受領し、内容について説明を受けることが必須です。これがなければ、法的に普通借家契約として扱われる可能性があります。
万が一の際の証拠として、説明書面を必ず保管しておきましょう。
③終了通知の時期と方法
定期借家契約では、貸主は期間満了の1年前から6ヶ月前までに、借主に「契約が終了します」と通知する必要があります。
この通知が遅れると、借主はそのまま物件を使用できるようになり、貸主は通知後6ヶ月間は契約終了を主張できません。借主側としては、貸主からの通知がこの期間に来ているか、注意深くチェックすることが重要です。
普通借家と定期借家の違い、そして店舗・オフィスで潜む3つの高額な罠について解説してきました。ですが、契約書の条文は専門用語が多く、一般の方が「中途解約リスク」や「スケルトン返し」の費用を正確に読み取るのは困難です。契約前の専門家によるチェックを行うことで、数千万円の違約金や解体費用からあなたの事業を守ることができます。
商業用不動産に特化したポータルサイトTEMPOLYでは、契約満了を通知する書面の作成サポートも行っています。作成された書類の内容のチェックも行っているので、不安な点が少しでもあるのなら、ぜひご相談ください。
契約に関するよくある質問
Q1. 定期借家契約で「途中解約できない」と言われたけど本当?
原則として、定期借家契約は契約期間の途中で解約できません。特約で中途解約権がある場合のみ、借主は事前通知に従って契約を終わらせられます。契約前に必ず契約書を確認し、必要であれば特約の追加を相談しましょう。
Q2. 退店する予定だけど、立ち退き料はもらえる?
現在の契約形式によって変わります。
- 普通借家契約の場合: 貸主の都合による退去要求に対し、正当事由を補完するために立退料をもらえる権利があります。
- 定期借家契約の場合: 期間満了による終了であり、借主の継続使用権はないため、原則として立ち退き料は発生しません。
Q3. 店舗を出す予定だけど、定期借家の方がいいの?
一概には言えません。内装投資が大きい場合は、更新保証がある普通借家契約が安心です。しかし、市場相場よりも賃料が割安な場合や、期間限定のポップアップストアなどの場合は、定期借家契約が向いています。目的とコスト、リスクを天秤にかけて選びましょう。
Q4. 契約書に記載のない「中途解約の交渉」はできる?
特約がない場合でも、貸主に相談することは可能です。ただし、交渉が成立する確率は低く、高額な違約金(賃料の6ヶ月分~1年分など)の支払いを前提とされることがほとんどです。交渉が長引くと、その間の家賃も発生し続けるため、経済的に大きな負担となります。
Q5. 賃料の値下げ交渉は、定期借家と普通借家のどちらがしやすい?
普通借家契約では、経済事情の変化があった場合、法律に基づいて賃料の増減額を請求できます。 定期借家契約では、賃料の固定特約が有効なため、期間中の値下げ交渉は難しいです。再契約のタイミングで市場相場を根拠に交渉を行うのが一般的です。
Q6. 貸主が倒産した場合、契約はどうなりますか?
貸主が倒産しても、締結済みの賃貸借契約の効力は失われません。新しいオーナー(管財人や競売の落札者)に賃貸借契約が引き継がれます。借主が賃料をきちんと支払っている限り、普通借家契約であれば長く営業を続けられますし、定期借家契約であれば期間満了まで継続できます。
一生に一度の契約、プロの目でチェックを!
不動産契約の種類は、一見ちょっとした違いに見えますが、実はあなたの事業の「寿命」を決める重要な要素です。普通借家契約と定期借家契約の特徴を知っておけば、契約交渉から退去、再契約の判断まで、安心して進められますよ。あなたの店舗運営が、無理なくスムーズにスタートできることを願っています。
TEMPOLYでは、店舗物件専門の不動産業者として、契約書に潜むリスクや不要なコストを事前にチェックし、安心して契約できるサポートを提供しています。契約内容に不安がある場合は、早めの確認・相談をおすすめします。

