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ガラス張り・デザイナーズ物件の選び方 5つの視点|ブランド価値を高める店舗設計

はじめまして。テナント仲介サービスTEMPOLYの井関です。TEMPOLYでは普段、都内を中心に、 毎月400~500件の物件情報データ更新を行い、常時掲載している2000件以上の物件情報の中から様々なオーナーさんの条件に合う物件探しを支援しております。独自の人流データや商圏分析データに強みのあるTEMPOLYでは、家賃や坪数だけで判断せず、適正家賃か、エリアの人流はどうか、など商圏の動きもセットで見て、勝ち筋があるかを一緒に検討しています。

そんな中で最近増えているご相談が、ガラス張り店舗やデザイナーズ物件について。

家賃も内装費もそれなりにかかる一方で、ブランドの世界観は作りやすい。とはいえ、

「おしゃれだけど高すぎる…」と不安を感じているオーナーさんも多い印象です。

そこでこの記事では、ガラス張り店舗やデザイナーズ物件を単なる「おしゃれな物件」ではなく、「デザイン投資」としてどう捉えるかを、次の5つの視点から整理していきます。 

  1. デザインの「意味」と自店との相性を理解する
  2. ファサードと動線で集客力を高める
  3. 体験価値と世界観づくりでファンを増やす
  4. 光熱費・防犯・メンテナンスなどのリスクを把握する
  5. 初期投資・ランニングコスト・契約条件を数字から逆算する

そのデザインに「意味」があるか?コンセプトの明確化と判断基準

最初のポイントは、「ガラス張り」や「デザイナーズ」というラベルに振り回されず、自店にとってそのデザインがどんな意味を持つのかを整理することです。

1-1 ガラス張り店舗の機能性と見た目のメリット

ガラス張り店舗の魅力は、機能面と見た目の両方にあります。たとえば次のような点です。

・自然光を豊富に取り込み、店内を明るく開放的に保てる

・外からの視線を活かして、狭い空間でも広がりを感じさせられる

・高性能ガラスを選べば、高い防音性・断熱性も期待できる

さらに、ガラス面を大きく取ることで、ファサード(お店の外観)全体をショーウィンドウとして使えるようになります。新作アイテムを大胆にディスプレイするアパレルショップや、バリスタの手元の動きまで見せるカフェなど、「このお店はなんだか良さそうだ」と直感的に感じてもらいやすいのがガラス張り店舗の強みです。

1-2 デザイナーズ物件=コンセプトがしっかりと設計されている物件

デザイナーズ物件というと「おしゃれな物件」というイメージが先行しがちですが、本質的には「コンセプトがしっかりと設計されている物件」です。色彩、照明、素材、空間レイアウトなどの要素が、バラバラではなく一貫した意図のもとで組み立てられていることがポイントとなります。

空間全体がブランドアイデンティティを体現していると、お客様は入店した瞬間から一つの世界観に包まれます。この一貫した体験はお客様の感情に深く働きかけるため、単なる「買い物」ではない特別な時間として記憶に残りやすく、「あのお店、また行きたいな」「他の店では得られない体験だった」と感じてもらえる可能性が高まるのです。

逆に言えば、「なんとなくコンクリート打ちっぱなし」「なんとなく天井を抜いてみた」といった、“なんとなくデザイナーズ風”の空間は、世界観としての説得力が弱くなりがちです。物件を選ぶときは、「自分たちのブランドコンセプトをこの箱でちゃんと表現できそうか?」という視点で見ていくことが重要となります。

1-3 空間デザインを構成する4つの要素

店舗の第一印象を決めるのは、ファサード(お店の外観)や内装を構成する建材と、その見せ方です。代表的な要素を簡単に整理しておきます。

・木材:温かみを演出し、女性やファミリー客の入店ハードルを下げ

・コンクリート/無骨さや強さ、都会的でスタイリッシュな印象を与えやすい

・ガラス/透明性、開放感、高級感を演出しやすく、外と中を自然につなぎやすい

・照明/店内外を明るく保ち、時間帯を問わず店舗の存在感や世界観を支える

こうした素材選びは、単なる内装工事ではなく、ブランド戦略そのものです。

デザインに投資するというのは、これらの要素を戦略的に組み合わせて、「どんな人に、どう感じてほしいか」を空間で語るということだと考えてください。

ファサードと動線で集客する/見せ方そのものを集客装置にする

2つ目の視点は、「見せ方そのものが集客装置になる」という考え方です。ガラス面は、いわば24時間働く看板になります。通行人を釘付けにする、3つの設計手法を解説します。

2-1 ショーウィンドウ効果をどう生かすか

大きなガラス面は、それ自体が強力な看板になります。

店内の商品だけでなく、スタッフの動きやお客様の楽しそうな様子といった「空気」まで外に伝えてくれるからです。

特に夜間は、窓際の照明や間接照明が外壁を柔らかく照らし、一目で営業中かどうかが分かる存在感を作れます。看板では表現できない世界観まで自然と伝えられるのが、ガラス張り店舗ならではのメリットです。

2-2 チラ見せで安心感と興味を生む

ファサードデザインで大事なのは、「何屋さんか」が分かることに加えて、「自分向けのお店かもしれない」と感じてもらうことです。

すべてを見せるのではなく、店内の一部や商品を「チラ見せ」できる設計にすることで、通行人の興味を引きつけながら、入店への心理的ハードルを下げることができます。

こうした「入口の一コマ」を丁寧に設計することで、「値段が高すぎたらどうしよう」「自分が入って浮かないだろうか」といった不安を和らげることができます。

価格帯やターゲットが分かるコピーやビジュアルを組み合わせると、安心感はさらに高まるでしょう。「平日ランチ1,200円前後」「20〜30代向けカジュアル」など、通りすがりの人が一瞬でイメージできる情報を、さりげなく添えるイメージです。

2-3 動線設計で購買行動を後押しする

デザイン物件は、動線設計の工夫によってこそ真価を発揮します。

動線とは単に通路のことではなく、「どの順番で何が目に入り、どこで立ち止まり、どこで会計するか」といった体験の流れそのものです。

ストレスなく店内を回遊できる動線が整っていると、お客様は自然と多くの商品に触れることができ、その分だけ購買機会も増えます。

逆に、カッコよさを優先するあまり通路が狭すぎたり、どこから入ればよいか分かりにくかったりすると、せっかくのデザイン投資が逆効果になってしまうこともあるのです。

TEMPOLYでも、候補物件がデザイン重視の造りになっている場合は、「見た目は良いけれど、この動線だとピークタイムにスタッフが回りきれなさそうですね」「ベビーカーのお客様が多そうなエリアなので、もう少し通路幅を確保したいですね」といった会話を、オーナーさんとよくさせていただいています。

 「また来たい」を引き出すLTV特化の空間設計

3つ目の視点は、「一度来て終わり」ではなく、何度も通ってもらうための体験設計です。

デザイン投資のゴールは内装工事の完了ではなく、ファンになってくれるお客様をどれだけ増やせるかという点にあります。

3-1 一貫したブランド体験を設計する

色、照明、素材、香り、音楽などの要素に一貫性があると、お客様は店舗全体を一つの世界観として体験できるようになります。

こうした一貫した体験は感情に働きかけるので、単なる商品購入とは違う記憶として残りやすいです。

特に、初めて来店した最初の数分間で感じる印象は、そのお店に「また行くかどうか」を左右すると言われます。

だからこそ、入口周りや最初に目に入るエリアのデザインは、慎重に考えたい部分と言えるでしょう。

3-2 SNS映えと口コミ拡散の効果

おしゃれで居心地の良い内装は、リピーターを増やすだけでなく、SNSで話題になりやすいという副次的なメリットもあります。

いわゆる「SNS映え」しやすいフォトスポットを一つ用意しておくことは、今や立派な集客施策の一つです。

3-3 居心地の良さとリピート率/リピーターを育むためのデザイン設計

ファンになってくれるかどうかは、居心地の良さが大きく影響します。

見た目が良くても、座り心地が悪かったり、落ち着いて話せるスペースがなかったりすると、リピーターが定着せず、常に新規集客に追われることになります。

ガラス張りの店舗では特に、開放感とプライバシーのバランスが重要となります。

外からの視線を気にしすぎず、それでいて閉塞感は出さないように、パーテーションやカーテン、植栽、ミラーの配置などで細かく調整していくイメージです。

3-4 デザイン投資とLTVの考え方

デザイン投資を数字の面から見るときによく使われる考え方の一つが、顧客生涯価値、いわゆるLTVという視点です。

簡単に言えば、「一人のお客様がどれくらい長く、どれくらいの頻度で、どのくらいの金額を使ってくれるか」を掛け合わせたものとなります。

デザインによって居心地が良くなり、リピート率や紹介が増えれば、一人のお客様からいただける売上の総額は自然と増えます。初期のデザイン費用は、そのLTVを引き上げるための投資と言い換えることもできるのです。

TEMPOLYのご相談の場では、デザイン費も含めて、「この家賃水準で何年くらいかけて回収していくイメージか」「LTVをどのくらいまで引き上げられそうか」といったところまで、一緒にざっくりシミュレーションすることが多いです。

リスクと運用コストを把握する/光熱費・防犯・メンテナンス

4つ目の視点は、「見た目の良さの裏側にあるリスク」をあらかじめ理解しておくことです。高いデザイン性を持つ物件には、光熱費や防犯、メンテナンスといった面での注意点もセットでついてきます。

4-1 温熱環境と光熱費の課題

ガラス面が大きいと、採光性が高くなる一方で、熱の出入りも大きくなります。

特に西日が強く当たる方角の場合、夏場の冷房負荷が高くなり、光熱費がかさみやすいという課題があるのです。

対策としては、断熱性能の高いガラスを選ぶ、遮熱フィルムを貼る、内窓を追加するなどの方法があります。ただし、それぞれに工事費やデザインへの影響が出てくるため、最初の段階で見積もりに織り込んでおくことが大切です。

4-2 プライバシーと防犯性のバランス

ガラス張りは中が見える安心感を生みますが、業態によってはお客様が落ち着かない原因にもなります。また、防犯面でのリスクもゼロではありません。

カーテンや格子、パーテーションなどを部分的に使い、視線をコントロールしながら開放感を残す工夫が必要です。座席の高さや向き、鏡の配置などでも体感は大きく変わるので、内装会社と細かく擦り合わせておきたいポイントですね。

4-3 清掃とメンテナンスコスト

大きなガラス面やコンクリート打ちっぱなしの壁は、少しの汚れや劣化でも目立ちやすいという特徴があります。

きれいな状態を保つためには、定期的な清掃や専門業者への依頼が必要になることも多いです。例えば、高所のガラス清掃は1回3万〜5万円。月1回行えば、年間50万円近い固定費増になります。

失敗を避ける「数字と契約条件」から逆算した判断

最後の視点は、「数字と契約条件から逆算して判断する」という考え方です。

初期費用の内訳と出店前のチェックポイントを押さえておくことで、「攻めていい物件」と「やめておくべき物件」の線引きがしやすくなります。

5-1 坪単価と初期費用の目安

店舗の内装や外装工事費用は、業種や面積によって大きく変わりますが、たとえば10坪前後のカフェや美容室であれば、内装にこだわるなら坪50万〜70万円。つまり、小規模店(〜10坪)で500万円〜、中規模店(〜30坪)なら1,500万円〜、大箱(50坪〜)なら3,000万円以上が相場です。この総額の中には、床や壁、天井、厨房や水回りの工事、家具や照明の費用などが含まれます。

全体の60〜70パーセントくらいが内装工事にあてられることが多く、ここをどこまでデザイン性重視にするかで、総額も変わってくるのです。

5-2 内装・外装工事費とデザイン監修費

工事費用は、ざっくり分けるとレイアウトを決める基本設計、仕様を詰める詳細設計、そして工事が始まってからのデザイン監修といった要素で構成されます。

デザイン監修費は総工費の8〜12パーセント程度を目安に設定されることが多いですが、ここを安易に削りすぎると、結果的に集客力や使い勝手に響いてしまうこともあるでしょう。

5-3 出店前の最重要チェックリスト(戦略・財務・契約の3観点)

最後に、デザイン性の高い物件を本当に自店の武器にできるかを判断するためのチェックポイントをまとめておきます。

実際のご相談でも、ここに挙げるような観点を一緒に確認していくことが多いです。

【戦略とデザインの整合性】

・動線が複雑になりすぎていないか。主要な商品やサービスに自然と目が行くレイアウトになっているか

・内装のテイストと建材の組み合わせが、狙いたいターゲットと合っているか

・開放感とプライバシーのバランスが取れており、お客様が落ち着いて滞在できそうか

・昼と夜の見え方を想像したときに、看板や照明でしっかり存在感を出せそうか

 【財務と運用の観点】

・デザイン費を含めた初期投資を、契約期間内でどのくらいのペースで回収するイメージか

・清掃費や光熱費など、デザイン性ゆえに増えそうな運用コストを見積もれているか

・家賃、水道光熱費、人件費などを含めた月次の固定費と、想定売上とのバランスは現実的か

 【契約と退去時コストの確認】

・退去時にスケルトン状態まで戻す義務があるか。その場合、おおよその費用感を把握しているか

・通常の経年劣化まで借主負担になっていないか。契約書の特約をきちんと確認できているか

・入居時の状態を写真などで記録し、どこまで戻せば良いか貸主と共通認識を持てているか

・原状回復工事の業者を自由に選べるか。貸主指定の場合は費用が高くなりすぎないか

 途中で不安になったり、判断に迷ったりしたタイミングで、第三者の視点をうまく使っていただくのが良いでしょう。

TEMPOLYでは、空室を埋めるために無理やり物件を押し込むのではなく、「この条件だと資金的にかなりきつくなりそうなので、別の選択肢を探したほうが良さそうです」といったお話も正直にさせていただいています。

やめたほうが良い物件は、きちんと「やめましょう」とお伝えしたうえで、一緒に別の候補を探していくスタンスです。

まとめ デザイン物件は「投資」として冷静に判断する

ガラス張り店舗やデザイナーズ物件は、うまくはまれば強力な武器になります。

通行人の目を引き、ブランドの世界観を伝え、ファンになってくれるお客様を増やしてくれる心強い存在です。

そのための最重要の判断基準は、次の3点に集約されます。

・デザインの目的/コンセプトに合致し、集客とLTV向上に貢献するか

・運用コスト/光熱費、清掃費、防犯対策などの隠れたコストを見積もれているか

・回収シミュレーション/初期投資とランニングコストを契約期間内に回収するイメージが描けているか

だからこそ、「なんとなくおしゃれだから」ではなく、「投資としてきちんと回収できるかどうか」という視点で、物件を冷静に見極めていくことが大切です。

TEMPOLYでは、家賃や坪数といった表面的な条件だけでなく、人流データや商圏分析、物販特有の論点なども踏まえながら、そのデザイン投資が本当に事業として成立するかを一緒に考えていきます。

「この物件の家賃水準は妥当なのか」「このガラス張りの造りは自分の業態に合うのか」など、今まさに悩んでいる物件があれば、まずは一度、棚卸しをしていきましょう!

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