はじめまして。テナント仲介サービスTEMPOLYの井関です。TEMPOLYでは普段、都内を中心に毎月400〜500件の物件情報データ更新を行い、常時掲載している2,000件以上の物件情報の中から、さまざまなオーナーさんの条件に合う物件探しを支援しています。家賃や坪数だけでなく、「人がどこから来てどこへ流れているか」という人流データや商圏分析をセットで見ることで、本当に勝ち筋があるかどうかを一緒に検討してきました。
物件探しの現場でよく聞くのが、「図面に『看板設置可』と書いてあるけど、本当に集客できるの?」という不安の声です。
実は、ただ看板が出せるだけでは集客には繋がりません。「人が見る角度」や「法的な制限」まで確認しないと、高い家賃を払って効果ゼロ…という失敗もあり得ます。
そこでこの記事では、看板設置可能物件で失敗しないための7つのポイントを整理しました。これらを押さえれば、「図面に書いてあるから大丈夫」ではなく、「この物件は看板まで含めて本当に集客の勝ち筋があるか」を自分の目でチェックできるようになるはずです。
看板で集客できる物件・できない物件を見極める
物件選びで「看板」を重視すべき理由は、それが広告費の削減に直結するからです。まずは、看板が集客にどう影響するのか、その全体像を整理しましょう。
・広告費の削減→良い看板はWeb広告の代わりになる
・24時間営業→店が閉まっていても認知を広げる
・即時来店→通りがかりの「ついで来店」を誘う
1-1 デジタル時代だからこそ光るリアル看板の価値
SNS広告やリスティング広告が当たり前になった今でも、「たまたま前を通って看板を見て入った」という来店は少なくありません。看板は単なる店名表示ではなく、通行人の潜在意識に働きかけ、24時間休まずお店を紹介し続けてくれる営業担当のような存在です。
物件選びの段階で「どこまで、どんな看板を出せるか」は、以降の広告宣伝費に直結します。視認性の高い位置に十分な大きさの看板が出せる物件であれば、それ自体が強力な広告媒体となり、Web広告やチラシの予算を抑えながら安定的に新規客を呼び込めます。一方、看板がほとんど出せない物件では、認知を取るために常に広告費を投下し続ける必要があり、損益分岐点が上がってしまうのです。
1-2 看板は「24時間の営業担当」として機能させる
看板がどのように集客に効いてくるのかを整理するために、お客さまの心理の流れごとに役割を分解してみます。
・認知→あそこに店がある、と気づいてもらう段階。看板の大きさ・色・位置が効きます。
・興味→何の店か理解してもらう段階。業種・サービス内容・雰囲気が一目でわかる情報設計が必要です。
・欲求→自分にとって良さそうだ、と感じてもらう段階。写真・価格帯・ベネフィットの見せ方が重要です。
・記憶→今は入らないが覚えておこう、と思ってもらう段階。覚えやすい店名や印象的なビジュアルが効きます。
・行動→今入ろう、と一歩踏み出してもらう段階。入口への矢印やオープン表示、店内の様子が伝わる工夫が力を発揮します。
・有名チェーンであれば店名を大きく出すだけでも集客につながりますが、多くの個人店や新規ブランドでは、店名だけでは通行人に意味が伝わりません。「何を売っていて」「どんな体験ができて」「いくらくらいなのか」を数秒でイメージしてもらえるかが勝負です。
1-3 物件選びで見るべき看板ポテンシャル
募集図面に「看板設置可」とあっても、実際にどれだけ効果を出せるかは物件次第です。内見時には次のポイントをチェックしてみてください。
・障害物の確認→街路樹や電柱で、看板が隠れていないか
・人流との角度→歩く人の「正面」に看板が向いているか
・高さの適切さ→歩行者の目線、またはドライバーから見える高さか
・余白の有無→エントランス周りや袖看板枠に表示できるか
・拡張性→将来、売上が伸びた際に増設できるか
・これらはポータルサイトの写真だけでは判断しづらい部分です。TEMPOLYでは、人流データと街の歩き方のノウハウを合わせて現地をチェックし、「図面上は看板設置可だが、実際には効きづらい物件」は率直におすすめしません。その上で、看板まで含めて集客の筋が見える物件に絞り込んでいきます。
ルール違反は撤去対象!法規制のチェックポイント
看板は「自分の店だから自由に出せる」わけではありません。ルールを知らずに設置すると、最悪の場合、強制撤去や罰金の対象になります。
特に注意すべき3つの法律・条例を解説します。
2-1 エリアによって「看板が出せない」場所がある
日本には屋外広告物法があり、その具体的な基準は各都道府県や政令市の屋外広告物条例で定められています。
エリアは大きく「原則として看板が出せない場所」と「条件付きで出せる場所」に分かれます。景観重視エリアでは自店の小さな看板以外ほとんど不可、商業地域でも面積・高さ・色使いに細かな制限があることも珍しくありません。一定面積以下なら許可申請が不要になる「適用除外枠」を設けている自治体も多いため、計画段階で「このサイズなら申請不要か」を必ず確認しましょう。
2-2 建築基準法と安全性のチェック
一定の高さや大きさを超える看板は、建築基準法上の「工作物」として扱われ、建物と同様に強度や構造の審査が必要です。高さ4メートルを超える自立看板や屋上看板を設置する場合は、図面や構造計算書を添えて確認申請を行い、許可を得なければなりません。
防火地域・準防火地域では、主要部分を不燃材料でつくる必要があるなど、耐火性能のルールも加わります。基準を守らずに設置した結果、行政から是正指導や撤去命令が出たり、事故時に保険が使えない可能性もあります。安全性に関わる部分は、必ず看板業者や設計者と相談しながら、法令に沿って進めることが重要です。
2-3 道路にはみ出す看板と境界の考え方
店舗が道路に面している場合、袖看板や日除けテントなどが敷地境界線より外へ出ると、道路管理者の許可が必要になります。歩道の上空にはね出す袖看板は、歩行者の頭上高さを十分に確保する必要があり、車道側にはみ出す場合はさらに厳しい基準が設けられています。
スタンド看板を歩道に置くと「道路の不正使用」になります。現場では黙認されているケースもありますが、指導が入れば即撤去です。また、強風で倒れて通行人に怪我をさせた場合、オーナーが重い責任を負うことになります。基本方針として「スタンド看板は敷地内に置く」と決めておいた方が安全です。
2-4 賃貸借契約の中で確認しておきたいこと
法律だけでなく、物件オーナーとの賃貸借契約の中にも看板に関するルールがあります。契約前に最低限、次の点は確認し、可能なら契約書や図面に落とし込んでおきましょう。
・設置できる場所(何階のどの壁面か、袖看板のどの段か)
・看板料や電気代の有無(賃料とは別の月額使用料が発生しないか)
・退去時の原状回復範囲(盤面のみ撤去か、枠や金物まで撤去し壁補修まで必要か)
・デザインの事前承認の有無(色やロゴに制限がないか)
・屋外広告物申請に必要な所有者承諾書にサインしてもらえるか
・これらは、後から揉めやすいポイントでもあります。TEMPOLYでは、オーナーさんが出したい看板のイメージを伺いながら、契約書に盛り込むべき条件を整理し、将来のトラブルを防ぐお手伝いをしています。
看板の視認性を高める「距離と角度」の法則
3-1 文字サイズは「距離(cm)÷250」で計算する
看板情報がきちんと読めるかどうかは、「文字サイズ×距離」のバランスで決まります。文字サイズは以下の計算式で割り出せます。
$$必要な文字サイズ(cm) = 看板までの距離(cm) \div 250$$
・距離10mの場合→文字サイズ 4cm 以上
・距離30mの場合→文字サイズ 12cm 以上
・一歩離れてみて、「店名が見えるか」ではなく「計算式通りのサイズか」を確認しましょう。
3-2 視線の動きと設置角度
人が歩いているときの有効視野は意外と狭く、進行方向の正面付近しかはっきり認識できません。そのため集客目的の看板は、通行人の進行方向に対してできるだけ垂直に、真正面を向けて設置することが重要です。
壁面と平行に取り付けたファサード看板は、店の目前まで来ないと認識されにくく、どちらかと言えば「到着確認用」です。一方で、袖看板やスタンド看板は進行方向に面を向けやすく、遠くからでも見つけてもらいやすい形です。限られた予算の中で効果を最大化するなら、ファサードだけでなく、袖・スタンドへの投資も検討しましょう。
3-3 空中店舗や地下店舗の工夫
2階以上や地下のいわゆる空中店舗は、1階路面店に比べてどうしても見つけてもらいづらくなりますが、工夫次第でハンデを埋めることができます。
・1階部分にスタンド看板や集合看板の目立つ枠を確保する
・階段やエレベーターホールを、店の世界観につながる通路として演出する
・道路に面した窓があれば、ガラス面を大きなサインとして活用する
・提灯やフラッグなど動きのある立体物で、2階・地下への視線を誘導する
・空中店舗は賃料だけ見るとお得に見えますが、「看板・導線の工夫にどれくらいコストがかかるか」まで含めて判断することが重要です。
デザインとレイアウトで伝わり方を変える
視認性が確保できたら、次は「中身」のデザインです。プロに依頼する場合でも、以下の3点はオーナー自身が決めておく必要があります。
・色の心理効果→業種に合った色を選ぶ
・フォント選び→おしゃれさより「読みやすさ」
・QR誘導→アナログからWebへ繋ぐ
4-1 色の選び方で印象をコントロールする
色は文字より先に感情に働きかけます。同じ店でも、使う色によって高級にもカジュアルにも見え方が変わります。赤・オレンジは目立ちやすく飲食やセールに向き、青は清潔感や信頼感を演出したいクリニックや塾に多く使われます。黒は高級感が出る一方で、暗すぎると「閉まっている店」のように見えるので光の当て方に注意が必要です。
いずれの色でも、「背景色と文字色の明るさの差」をしっかりつけることが読みやすさの大前提です。白地に黒、黄色地に黒、濃紺地に白など、コントラストの強い組み合わせを意識するだけでも視認性は大きく変わります。
4-2 フォントと情報の優先順位
看板の文字は「太めのゴシック体」が基本です。筆記体や細い明朝体は、雰囲気は良いですが遠くからは読めません。
・OK→太ゴシック(視認性重視)
・NG→筆記体、細いフォント(雰囲気重視)
・おしゃれな英語店名にする場合でも、必ず「美容室」「カフェ」といった日本語の業種名を添えてください。
看板内の情報は、視線の動きに合わせて優先順位をつけます。一般的に視線は左上→右下へ流れるため、左上に一番伝えたい要素、中央に写真や店名、右下にQRコードや矢印など「次の行動を促す情報」を置くと、自然に頭へ入っていきます。
4-3 QRコードでオンラインへつなぐ
近年では、看板にQRコードを載せて、スマートフォンから詳しい情報へ誘導するケースも増えています。ただコードを置くだけでなく、「読み取ると何が得られるのか」を一言添えるのがポイントです。
「本日の空き状況はこちら」「読み取るとクーポンが表示されます」といった一文があるだけで、利用率は大きく変わります。さらに、QRコード専用のLPや計測用URLを用意しておけば、「看板きっかけの来店」が数字で見えるようになり、看板の改善も進めやすくなります。
看板の種類と費用相場(1万〜100万円まで)
5-1 主な看板の種類と役割
看板の種類ごとの相場目安は以下の通りです。あくまで目安ですが、予算取りの参考にしてください。
看板の種類 費用目安 特徴
スタンド看板 1万〜5万円 置くだけで導入可能。入店誘導に必須
袖看板 5万〜25万円 遠くからの発見率UP。電気工事が必要
ファサード看板 10万〜50万円 店の顔。サイズと足場の有無で変動
ウィンドウサイン 3万〜10万円 窓ガラスを活用。空中店舗でも有効
自立看板 20万〜100万円 駐車場やロードサイド向け。基礎工事が必要
5-2 導入コストを見る時のポイント
看板本体の価格に加えて、以下の要素がコストに影響します。
・照明の有無と方式(内照・外照・バックライトなど)
・設置場所が高所かどうか(足場・高所作業車の費用 ※別途3万〜5万円程度〜)
・素材の違い(軽く安価なアルミ複合板か、高耐久なステンレスか)
・一見高く感じる看板でも、夜間の視認性や耐久性を考えると長期的には十分元が取れることも多いです。逆に、安さだけを優先して風雨に弱い看板を選ぶと、数年おきの交換・補修で結果的に高くつくこともあります。
デジタル施策との連携で効果を伸ばす
6-1 電子看板の活用
動画やスライドを映せる電子看板は、日替わりメニューや時間帯ごとのおすすめを柔軟に差し替えられ、情報量とインパクトの面で大きな強みがあります。初期費用は静止画より高くなりますが、ポスターの刷り替えコストや作業時間が減ること、通行人の足を止める力が高いことを考えると、立地次第では十分投資に見合います。
6-2 Googleマップなどとの情報連携
多くのお客さまは、看板を見て少し気になった段階でスマートフォン検索を行い、Googleマップの口コミや写真を確認してから入店を決めます。そのため、看板に載せる店名・住所・電話番号は、Googleビジネスプロフィールの表記と完全に一致させておくことが重要です。微妙な表記ゆれがあると、検索結果に正しく表示されないことがあります。
マップ上の写真には、看板を含めた外観写真をオーナー側から積極的に登録しましょう。実際の街並みとスマホ画面が一致すると、お客さまは安心して店舗を見つけられます。TEMPOLYの現場でも、「看板とマップ情報をそろえただけで、新規客の迷いが減った」という事例をよく耳にします。
メンテナンスとリスク管理
7-1 定期点検と安全管理
看板は一度設置して終わりではありません。風雨や紫外線にさらされ続けることで、金物の緩みや素材の劣化が進みます。
高さ4mを超える看板などは、条例で定期点検が必須です。特に台風の後は、ネジの緩みや破損がないか目視で確認しましょう。メンテナンス費用を惜しんで事故が起きると、数千万円単位の損害賠償になることもあります。「安心を買うコスト」として予算に組み込んでおくのが賢明です。
7-2 きれいな看板はブランドを守る
汚れた看板・錆びた看板・一部しか光らない看板は、それだけでお店への信頼感を下げます。看板はお店の第一印象を決める顔です。数か月に一度は清掃を行い、電球が切れていれば早めに交換するなど、日々のメンテナンスをルーティン化しておきましょう。
7-3 万が一に備える保険
看板が落下・転倒して通行人にけがをさせてしまった場合、店舗オーナーは重い責任を負う可能性があります。テナント総合保険や施設賠償責任保険などでどこまでカバーできるか、現在加入している保険を一度見直し、必要に応じて専門家に相談しておくと安心です。
まとめ 看板設置可能物件を味方につける
看板設置可能物件を選ぶ際は、以下の3点を意識してください。
1.現地確認→図面だけでなく、人の視線と障害物を見る
2.ルール確認→その場所で本当に出したい看板が出せるか
3.予算計画→看板製作費と撤去費も含めて計算する
図面に「看板可」とあっても、実際に集客できるかは別問題です。
とはいえ、現場では人の流れの向きや周辺建物との兼ね合い、オーナーさまの事業計画や資金計画など、検討すべきポイントは多岐にわたります。ネットの情報だけを頼りに判断するのは不安だという方も多いでしょう。
TEMPOLYでは、単に物件を紹介するだけでなく、「この立地の看板なら、月〇〇人の集客が見込める」といったシミュレーションも行っています。
「候補物件の看板ポテンシャルを知りたい」という方は、物件URLをお送りください。人流データと照らし合わせて、正直に「勝てる物件か」を診断します。まずは情報収集のつもりで、気軽に使っていただけるとうれしいですね。
よくある質問
Q1 看板が出せない物件は選ばないほうが良いか
必ずしもそうとは限りませんが、看板がほとんど出せない場合は、その分を補うだけの集客チャネルが必要です。既に強いオンライン集客の基盤があったり、会員制で紹介がメインだったりする場合は成り立つこともあります。一方で、新規で一般のお客さまを集めたい業態では、看板が出せない物件はかなりハードルが高くなります。
Q2 看板の費用はどれくらいを目安にすれば良いか
業態や立地、看板の種類によって大きく変わりますが、路面店であればオープン時に最低でもファサードとスタンド看板の二つに投資するケースが多い印象です。全体の内装予算のうち、数パーセント〜一割程度を看板まわりに充てるイメージで検討しておくと、必要なものを取りこぼしにくくなります。
Q3 テナント仲介会社に相談すると、しつこく営業されないか心配
そのような不安をお持ちの方も多いと思います。TEMPOLYでは、長くお付き合いできるオーナーさんとの関係を大事にしたいと考えているため、無理なご提案や執ような営業はしていません。看板を含めた集客や資金計画の観点から「今は動くタイミングではない」と判断した場合は、その旨を率直にお伝えすることもあります。
Q4 看板まわりの法規制や申請も一緒に相談できるか
はい、物件探しの段階から、看板の設置可能性や必要な申請の有無についても一緒に整理していきます。具体的な申請書の作成や構造計算などは看板業者や設計事務所の領域になりますが、「どの専門家と、どのタイミングで連携すべきか」については、これまでの事例を踏まえてサポートしています。



