はじめまして。テナント仲介サービスTEMPOLYの井関です。TEMPOLYでは普段、都内を中心に、 毎月400~500件の物件情報データ更新を行い、常時掲載している2000件以上の物件情報の中から様々なオーナーさんの条件に合う物件探しを支援しております。独自の人流データや商圏分析データに強みのあるTEMPOLYでは、家賃や坪数だけで判断せず、適正家賃か、エリアの人流はどうか、など商圏の動きもセットで見て、勝ち筋があるかを一緒に検討しています。
退去が近づくと、原状回復の見積もりを見て「これって本当に全部やる必要あるの?」「相場が分からなくてサインできない」と手が止まりがちです。
そこで、この記事では、事業用物件ならではの“原状回復義務”の考え方から、どこまで直すべきかのチェックリスト、費用相場とシミュレーション、退去6〜12か月前からの段取り、コストを抑える工夫、税務・キャッシュフロー、トラブル回避までを7つに整理して解説します。読み終えるころには「どこまで・いくらで・どう進めるか」を自分の判断で決められる状態になります。
TEMPOLYでは、物件探しの支援に加えて、人流データや賃料水準などの数字をもとに「この条件なら成立する/これは避けた方がいい」を率直にお伝えしつつ、原状回復コストも含めてテナント選びを一緒に整理しています。
退去時の「原状回復義務」とは?まず基本を整理する
1-1 原状回復義務と改正民法の考え方
まず押さえたいのは、「原状回復=借りた当時の状態に100%戻すこと」ではない、という点です。結論から言うと、「通常の使用による劣化」と「時間の経過による変化」は、原則として借主の負担ではありません。借主の責任で生じた損傷だけが原状回復の対象になります。
2020年に施行された改正民法621条では、原状回復義務について次のような整理がされています。
・通常損耗・経年変化の免責原則
通常の使用や時間の経過による劣化(通常損耗・経年変化)については、賃借人は原則として原状回復義務を負わないと明記されました。壁紙の日焼けや、一般的な家具の設置跡などがこれにあたります。
・賃借人の帰責事由に基づく修繕義務
一方で、故意・過失・善管注意義務違反(本来払うべき注意を怠ったこと)によって生じた損傷は、賃借人の負担となります。キャスター付き椅子による深い床傷、結露放置によるカビ、喫煙によるヤニ汚れなどが典型例ですね。
・「賃借人の責めに帰することができない事由」の明確化
損傷と借主の行為との因果関係がより厳密に問われるようになりました。借主に責任がないといえる事情があれば、原状回復義務を負わないという構造です。
ただし、これらはあくまで「任意規定」です。事業用の物件では、契約書・特約でいくらでも修正されてしまう点が、実務上の最大の落とし穴になります。
1-2 住宅と店舗・オフィスの原状回復の決定的な違い
原状回復の実務で最も重要なのは、「住宅」と「事業用物件」のルールがまったく違うという点です。同じ「クロス張り替え」でも、住宅ではオーナー負担、事業用ではテナント負担というケースが普通にあります。住宅の感覚のまま退去交渉に臨むと、大きく読み違えるポイントですね。
・住宅(マンション・アパート等)
- 借主は「消費者」として手厚く保護される
- 国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が事実上のルールブック
- 借主に一方的に不利な特約は無効となる可能性が高い
・事業用物件(店舗・オフィス等)
- 借主は「事業者(プロ)」とみなされる
- 契約自由の原則が優先され、契約書の文言と特約が絶対視される
- 通常損耗や経年変化を含めて、広い原状回復義務を課す特約が有効と判断されやすい
1-3 「原状回復ガイドライン」と事業用物件の位置づけ
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、賃貸住宅向けの指針です。法的な拘束力はありませんが、住宅の裁判では判断の基準として重視されることが多く、実務上はルールブックのように扱われます。
特徴は、減価償却の考え方を取り入れている点です。例えば、クロスやカーペットは6年で残存価値をほぼゼロとし、入居した年数に応じて借主負担の割合を下げる、という考え方です。
国土交通省のガイドラインは主に住宅用であり、最高裁判所の判例でも「事業用物件における特約の有効性」は広く認められています。店舗やオフィスのような事業用の物件では、SOHOや住居兼事務所など、ごく一部の例外を除き、
・ガイドラインの減価償却は使われない
・契約書に基づいて「クロス・床材の全面張替」「スケルトン返し」などが求められる
というケースがほとんどです。「ガイドラインがあるから大丈夫」と安心するのではなく、「契約書にどう書いてあるか」を冷静に読む姿勢が重要になりますね。
なお、TEMPOLYでは、こうした法律・ガイドラインの考え方だけでなく、「実際の相場感」や「同じビルでの他テナントの事例」も踏まえて整理しながら、オーナー側・借主側双方が落としどころを見つけられるようにサポートしています。
どこまで直す?原状回復の範囲チェックリスト
2-1 借主負担になる損耗・汚損
結論から言うと、「故意・過失」「通常使用を超える使い方」による傷や汚れは、原則すべて借主負担になります。そのうえで、どのようなケースが該当するのかを、代表例で整理しておきましょう。
・壁・天井・クロス
- 喫煙によるヤニ・臭い
- 深い釘穴・ネジ穴・アンカー跡
- 結露の放置によるカビやシミの拡大
- 子どもやペットの落書き・ひっかき傷
- 過度な重量物の設置による下地の損傷
・床材(フローリング・カーペット等)
- キャスター椅子による深い傷や剥がれ
- 飲みこぼしを放置したことによるシミやカビ
- 搬入・搬出時に付けた傷
- ペットの排泄物による汚損・臭い
・建具・設備その他
- 網戸や建具の破損
- 鍵の紛失・破損による交換費用
- 換気扇・コンロ周りの極端な油汚れ
- 水回りの強い水垢・カビ(清掃の放置が明らかな場合)
これらは、住宅・事業用を問わず借主負担となることが多いです。
2-2 貸主負担になる損耗・汚損(住宅の原則)
一方で、住宅(特約なし)の場合は、次のようなものはオーナー負担とされています。結論としては、「自然に古くなった部分」と「建物そのものの不具合」は、借主が支払う必要はないという考え方です。
・日焼けや自然光によるクロス・床の色あせ
・冷蔵庫・テレビ裏の「電気ヤケ」
・画鋲程度の小さな穴
・家具設置による軽微な凹み
・設備の寿命による故障(給湯器・エアコン等)
・建物自体の欠陥や天災による損傷
ただし、事業用物件では、これらも特約で「借主負担」とされているケースが少なくありません。住宅との感覚のズレに注意が必要ですね。
2-3 入居時の状態(スケルトン/居抜き)で範囲がどう変わるか
事業用物件では、「入居時の状態」が退去時の原状回復の範囲を大きく左右します。ざっくり言えば、スケルトン渡し・スケルトン返しが基本です。「居抜きで借りれば、前テナントの造作も含めてスケルトン戻しの費用を負担する可能性がある」というイメージです。
・スケルトン渡し・スケルトン返し
- 入居時は床・壁・天井・間仕切りが何もない状態
- 借主が作った造作や設備は、すべて撤去してコンクリート現しに戻す必要あり
- 床のハツリ・アンカーボルト撤去・産廃処理など、解体工事に近いボリューム
・事務所の仕上げ
- 天井ボード・照明・クロス・タイルカーペット・空調が揃った状態
- 増設したパーテーションの撤去に加え、「クロス・タイルカーペットの全面張替」「ブラインド交換」「室内クリーニング」などがセットで求められることが多い
・居抜き入居
- 前テナントの内装・設備を引き継いで入居する形態
- 契約書に「退去時はスケルトンに戻すこと」と書かれていると、前テナントの造作も含めて現テナントが解体負担するケースが多い
アパレルや雑貨などの物販店舗では、「どこまでが自分たちの造作で、どこまでがビル側の設備か」が分かりにくいケースも多く、什器や看板の扱い、古物商許可、飲食併設の可否など、物販特有の論点も絡んできます。こうした細かい境界線は、日常的にテナント仲介と原状回復の相談を受けている専門家に一度整理してもらうだけでも、後々のトラブル回避につながります。
2-4 特約で範囲が拡大・緩和される代表パターン
実務の契約書でよく見る特約は次の3つです。「どこまで直すか」は、民法ではなくこれらの特約で決まる、と言っても過言ではありません。
・通常損耗補修特約(拡大)
「通常の使用による損耗や経年変化の有無にかかわらず、クロス・床材・塗装・ブラインドを借主負担で新品に交換する」といった条文。
・スケルトン返し特約(拡大)
「借主は本物件内の一切の造作・設備・配線・配管等を撤去し、躯体コンクリート現しの状態に復して明け渡す」といった条文。居抜き入居時は特に確認が必要です。
・現状有姿返還特約(緩和)
「現状のまま明け渡せる。故意・過失による汚損のみ借主負担」とする条文。短期利用や居抜き退去を前提としたケースで見られ、借主にとっては有利な特約です。
2-5 退去前に「どこまでやるか」を合意しておくポイント
トラブルを避けるには、「どこまで工事をすればオーナーがOKなのか」を事前にすり合わせておくことが大切です。最低でも、次の3点は早めに確認しておきたいところですね。
- 工事区分図(A工事・B工事・C工事)の確認
- 入居時の写真・現況確認書の共有
- 原状回復における工事の要項・仕様書の入手
この3つが揃っているだけで、退去時の交渉力はかなり変わります。TEMPOLYでも、オーナーと借主のどちらか一方ではなく、双方の資料を並べて「このラインなら、双方納得できそうですね」といった落としどころを探る場面が多くあります。
店舗・オフィスの原状回復における費用の相場感とシミュレーション
3-1 業種別における坪単価の目安
原状回復における費用のざっくりしたイメージは、業種別に見ると次のようになります。結論としては、「水・油・煙・医療機器」が増えるほど、坪単価は一気に跳ね上がるイメージです。
・オフィス(中小規模):3万〜6万円/坪
・オフィス(大規模・ハイグレード):8万〜15万円/坪
・物販店:4万〜8万円/坪
・美容室・サロン:6万〜15万円/坪
・軽飲食(カフェ等):15万〜30万円/坪
・重飲食(焼肉・中華等):30万〜80万円/坪
・クリニック:10万〜20万円/坪
厨房・給排水・排気ダクト・防水など「水と油と煙」が絡む設備が増えるほど、坪単価は跳ね上がるイメージですね。
3-2 飲食店で高額になりやすいポイント
特に飲食店で見積もりを押し上げる要因は、次のような部分です。ここを事前に把握しておくことで、「なぜこんなに高いのか?」への納得感が変わります。
・厨房床の防水撤去・ハツリ工事
・テーブル上の排気ダクト、屋上まで伸びる外部ダクトの撤去
・地中に埋設型グリストラップの撤去・埋め戻し
・夜間工事・休日工事の割増(25〜50%UP)
これらが重なると、想定の倍以上の見積もりが出ることも珍しくありません。
3-3 30坪・50坪・100坪で見る概算イメージ
結論から言うと、都内の重飲食でスケルトン戻しをする場合、「30坪でも1,000万円前後は覚悟が必要」というのが現実的な水準感です。より具体的にイメージできるよう、30・50・100坪ごとの概算を整理してみましょう。
重飲食のスケルトン戻しを例にすると、都内ではおおよそ次のような水準感です。
・30坪:900万〜1,500万円
・50坪:1,500万〜2,500万円
・100坪:3,000万〜5,000万円
もちろんビルや設備状況によって上下しますが、「敷金で全部賄える」と考えるのはかなり危険だと感じますね。
TEMPOLYでは、こうした原状回復コストと、次に出店を検討しているエリアの「想定売上」「人流データ」「周辺賃料水準」などを並べて見ながら、無理のない資金計画を一緒に組み立てていきます。数字で全体像を可視化することで、「今は出店タイミングではない」「もう少し賃料を抑えたエリアを探そう」といった判断もしやすくなります。
退去6〜12か月前からの準備:原状回復の進め方
4-1 解約の予告から退去日までのタイムライン
オフィス・店舗では「解約予告6ヶ月前」「3〜6ヶ月前」といった条文が入っていることが多いです。退去日から逆算してスケジュールを組むと、「間に合わない」という焦りからくる不利な契約を防げます。
退去日から逆算して、次のような流れを意識しましょう。
・12〜7ヶ月前:契約書の確認・現状の把握・移転先の検討
・6ヶ月前:解約予告(書面)の提出、居抜き退去の打診
・5〜4ヶ月前:指定の業者+相見積もりの取得
・3ヶ月前:見積もり精査・減額の交渉
・2ヶ月前:工事業者の決定・発注・工程表の確定
・1ヶ月前:引越し・不用品の処分・各種届出の準備
・2週間前〜:原状回復の工事
・退去日:完了検査・鍵返却・引渡確認書へのサイン
原状回復と並行して次の立地を検討したい場合は、このタイムラインの中に「エリアの人流データ・競合状況のリサーチ」を組み込んでおくと、無駄な内見を減らせます。TEMPOLYでは、こうしたデータ分析もセットで提供しているため、「退去」から「次の一歩」までを一気通貫で整理しやすくなります。
4-2 見積取得時に必ず確認したい資料
正確な見積もりを取るには、図面とルールがそろっていることが前提です。これが欠けていると、「想定外の工事」が後からどんどん足されていきます。
・原状回復工事要項(仕様書)
・工事区分表(A・B・C工事)
・竣工図・設備図(電気・空調・防災)
4-3 指定業者 vs 自由見積もりの交渉
指定業者(B工事)の見積もりが明らかに高い場合は、内訳を確認することが大切です。
・内訳の細分化を求める
・内装部分をC工事に振り分けできないか打診する
・他社見積もりを提示し、単価是正を求める
・必要に応じて第三者のコンサル・協会の査定書を使う
といったステップで、現実的なラインまで下げていきます。
4-4 官公庁・ライフライン・明け渡しチェック
退去時は工事だけでなく、行政手続きや契約の精算も大量に発生します。抜け漏れを防ぐには、チェックリスト化して一つずつ潰していくのがおすすめですね。
例えば、次のようなものがあります。
・保健所・消防署・警察署への廃業届
・税務署への廃業届・給与支払事務所廃止届
・電気・ガス・水道・通信の解約
・残置物の撤去・鍵の返却・敷金の精算
原状回復の費用を抑えるための5つの工夫
5-1 入居時の契約交渉で「将来コスト」を下げる
原状回復の費用を本気で抑えるなら、勝負は「退去時」ではなく「入居時」に始まっています。契約書にハンコを押す前に、どこまで原状回復義務を負うのかを必ず確認しておきたいですね。
・通常損耗補修特約の削除・緩和を交渉する
・クロス張替単価やクリーニング費用の上限を特約で決めておく
・居抜き退去・造作譲渡を認める条文を入れておく
このあたりを、できる範囲で契約書に織り込んでおきたいところです。契約段階から原状回復コストを意識しておくことは、「出店後に引っ越しや撤退をする可能性が高い」物販・サービス業では特に重要です。
TEMPOLYでは、契約前の段階から「この特約のままだと、将来の撤退コストがかなり重くなります」といった観点でコメントを入れることも多く、出店の勢いだけで突っ走ってしまわないよう一緒にブレーキ役も担っています。
5-2 居抜き・造作譲渡の活用
退去時の「解体工事そのものをなくす」究極の方法が、居抜き退去です。
・オーナーの承諾を得て
・後継テナントを探し
・造作譲渡契約+原状回復義務承継の覚書を結ぶ
ことで、「原状回復費ゼロ+造作譲渡収入」という形も狙えます。もちろんすべてがうまくいくわけではありませんが、試さない手はないですね。
アパレルや雑貨店の場合は、什器・ラック・レジカウンター・看板など「そのまま使いたい設備」が多く、飲食との複合利用を検討しているテナントも増えています。TEMPOLYでは、物販特化で日常的にこうした居抜き案件を扱っているため、「この造作は次のテナントでも評価されやすい/されにくい」といった目利きも含めてアドバイスしています。
5-3 見積書の「不要工事」「過剰仕様」を削る
指定業者の見積もりには、次のような項目が紛れ込んでいるケースが多いです。
・共用部まで含まれた工事範囲
・諸経費・管理費の二重計上
・必要以上の仮設・養生
・クリーニングで済む部分を新品に交換
「ここは共用部では?」「補修で対応できませんか?」といった問いかけを重ね、不要な工事を一つずつ削っていくイメージです。
5-4 夜間工事・割増費用への対策
音の出る解体だけ夜間に行い、音の出ない仕上げ工事は通常の時間帯にしてもらうなど、工程を分けることで割増率を抑えられる場合があります。また、工期短縮の提案も、現場管理費や駐車場代の削減につながることがあります。
5-5 B工事→C工事への区分変更
指定の業者に任せる必要がない部分(造作壁・造作家具の撤去、専有部内の配線撤去など)は、できる限りC工事に振り替え、自社が指定した業者に発注することで、市場価格に近づけていくことがポイントです。
税務・減価償却・補助金を踏まえたキャッシュフローの考え方
6-1 原状回復における費用の会計処理
原状回復における費用の多くは「修繕費」として処理でき、その事業年度の損金に算入できます。一方で、ビルの価値を明らかに高めるような工事を同時に行う場合は「資本的支出」と判断され、資産計上して減価償却が必要になることもあります。
見積書・請求書の摘要欄に「原状回復工事」と明記してもらい、税理士と連携しながら最適な処理の方法を検討することが大切ですね。
6-2 資産除去債務(ARO)の考え方
大企業では、将来の原状回復の費用をあらかじめ見積もり、負債として計上する「資産除去債務」の考え方が求められます。中小企業ではそこまで厳密な運用をしていないケースも多いですが、
・将来の退去時コストをざっくり見積もり
・敷金との関係を整理しておく
これだけでも、資金計画の精度はぐっと上がります。
6-3 補助金・助成金の活用可能性
状況によっては、解体・撤去費用の一部が補助金の対象になることがあります。
・事業再構築補助金(業態転換に伴う改装等)
・小規模事業者持続化補助金(店舗改装の一部)
・事業承継・引継ぎ補助金(廃業・再チャレンジ型での原状回復費用など)
公募の内容は年度ごとに変わるため、最新の情報を商工会議所や中小企業庁サイトで確認しておくとよいですね。
原状回復におけるトラブルの典型パターンと防ぎ方
7-1 よくある争点のパターン
原状回復をめぐるトラブルは、「どこまでが借主負担か」の解釈で揉めるケースがほとんどです。
・クロス・床の色あせが「日焼け」なのか「汚れ」なのか
・喫煙による汚損がどこまで借主負担か
・古い設備を最新の設備にグレードアップする費用を請求されるケース
こうした場合、
・入居時の写真・記録
・ガイドラインの考え方(住宅の場合)
・設備の耐用年数・残存価値
などを総合的に見て判断されます。
7-2 口頭約束と契約書の違いへの対応
「仲介業者から『退去時は適当でいい』と言われた」という話は、本当に多く耳にします。ただし、裁判などでは契約書の文言が優先されるため、口頭約束だけでは非常に弱いです。
・重要な約束は覚書やメールで残す
・退去時に「そんな話は聞いていない」とならないよう、証拠を残しておく
この二つを徹底したいですね。
7-3 退去立会い時にやるべきこと・やってはいけないこと
やってはいけないことは、「その場で精算書や見積書に即サインしてしまうこと」です。内容が不明な場合は「持ち帰って検討します」と伝え、専門家に相談してから対応した方が安全です。
一方で、やるべきことは、次のような地道な積み重ねです。
・写真・動画で室内の状態を記録する
・契約書・ガイドラインを持参して、その場で条文を確認する
・やり取りを音声録音しておく
7-4 証拠の残し方と相談先
・入居直後の傷・汚れは、写真+メールで管理会社に送っておく
・契約書・図面・見積書・メール履歴は、敷金が戻るまで保管する
・トラブルになった場合は、消費生活センター、宅建業協会、弁護士など専門機関に相談する
感情論ではなく、事実と記録に基づいて話を進めることが一番の近道です。
原状回復トラブルに直面すると、「自分たちだけで何とかしなければ」と抱え込んでしまいがちですが、信頼できる第三者に一度状況を整理してもらうだけでも視界が開けることがあります。TEMPOLYでも、契約書や見積書を一緒に拝見し、「ここは交渉の余地がありそう」「ここは受け入れた方が良さそう」といった整理からお手伝いしています。
まとめ:完璧な「100点の原状回復」ではなく、納得できる「着地」を目指す
この記事では、退去時の原状回復をめぐる論点を、契約・相場・進め方・交渉・税務判断まで一気に整理してきました。事業用物件では「民法の一般論」よりも、契約書と特約が実務上の基準になります。だからこそ大切なのは、完璧な原状回復を目指すことではなく、条件とお金のバランスが取れた“落としどころ”を見つけることです。
急ぎで退去する場合は、次の借り手が見つからず、造作売却(居抜き売却)が叶わないこともあります。退去の6〜12か月前から、スケジュールと費用の見立てを立てることと、見積もりと工事範囲を冷静に精査し、必要なら交渉する姿勢が重要です。
完璧な100点の条件で原状回復を終えることよりも、
「ここまでやればオーナーも納得し、自社としても無理のないラインだ」と腹落ちできる70〜80点の着地を目指す方が、現実的で後悔の少ない進め方だと感じますね。
もし今、退去や原状回復について不安を感じているようであれば、TEMPOLYでは、ピンポイントの相談からでも対応し、状況によっては「造作売却」の形での売却支援も行っております。また、次の物件選びまで含めて、数字と現場感の両方で意思決定を支援します。
すっきりとした気持ちで原状回復をして、新たなステップへ進めるべく、じっくりと話し合いましょう。TEMPOLYの井関が、プロ目線から伴走します。
よくある質問
Q1. 途中解約の場合、原状回復はどうなる?
A1. 原状回復における義務の中身は基本的に変わりませんが、「違約金」や「残存期間の賃料相当額」を請求されるケースがあります。「中途解約条項」を必ず確認してください。
Q2. 自分たちでDIY修繕してもよいのか?
A2. 事業用の物件では、素人DIYはやり直しを求められるリスクが高くおすすめできません。清掃や簡単な撤去に留め、クロス・設備の補修はプロに任せた方が安全です。事前にオーナーの了承を得られる範囲でのみ行いましょう。
Q3. 退去後に追加請求が来た場合はどうする?
A3. まず明細書を取り寄せ、「退去立会い時に指摘されていない部分」が含まれていないか確認します。引渡確認書にサイン済みであれば、原則として追加請求に応じる必要は限定的です。ただし、隠れた瑕疵が見つかった場合は別途の協議が必要になることもあります。
Q4. 敷金(保証金)はいつ返ってくる?
A4. 多くのケースでは、退去後3〜6ヶ月程度で返還されます。原状回復の費用と未納賃料・光熱費の精算が終わってからの返金となるため、資金繰りに与える影響も踏まえてスケジュールを組みましょう。
Q5. 原状回復工事に消費税はかかる?
A5. かかります。原状回復の工事は「役務の提供」のため、消費税の課税対象です。敷金から差し引かれる場合も、税込の金額が差し引かれる点に注意してください。
Q6. 廃業して資金がなく、原状回復の費用が払えない場合は?
A6. まずは敷金・保証金からの充当を依頼し、それでも不足する場合は分割払いの相談、それでも難しい場合は法的な整理も含めて弁護士と協議する必要があります。夜逃げをしても問題は先延ばしになるだけで、保証人や将来の信用に大きなダメージが残ってしまいます。



