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2階以上の「空中店舗」は集客面で不利?

はじめまして。テナント仲介サービスTEMPOLYの井関です。TEMPOLYでは普段、都内を中心に、 毎月400~500件の物件情報データ更新を行い、常時掲載している2000件以上の物件情報の中から様々なオーナーさんの条件に合う物件探しを支援しております。独自の人流データや商圏分析データに強みのあるTEMPOLYでは、家賃や坪数だけで判断せず、適正家賃か、エリアの人流はどうか、など商圏の動きもセットで見て、勝ち筋があるかを一緒に検討しています。

今回は「空中店舗」の集客について、解説します。

商業用不動産、特に店舗の物件を探す際、「1階の路面店こそ至高」という考え方が長らく支配的でした。これは、路面店が持つ圧倒的な視認性と、通行人が立ち寄りやすいという自然な集客力に依存しているためです。この常識に照らし合わせると、2階以上の「空中店舗」は、視認性の低さやアクセスの不便さから、集客に不利という烙印を押されてきたのが現実です。

 こういったことから、

「1階の路面店は家賃が高すぎる。でも、2階以上の空中店舗は本当に集客できるのか不安だ」

「1号店でいきなり空中店舗を選んで、もしお客さんが来なかったらどうしよう」

「そもそも、空中店舗にメリットはあるのか?」

 こんな不安をお持ちではないでしょうか。

 この記事では、

・空中店舗が「不利」だと言われる理由と誤解

・2階以上の店舗に向く業態・向かない業態

・空中店舗を選んだ方が成功率が上がるケース

・空中店舗を成功させるための“チェックポイント”

 を、解説します。

「結局、1階じゃないと埋もれちゃうんでしょ?」と感じる人も多いと思います。 しかし、実は適切な戦略さえあれば、空中店舗は路面店よりも高い収益を生む「最強の選択肢」になり得ます。

さあ、共に空中店舗を開業するための戦略を練っていきましょう!

空中店舗が「不利」だと言われる理由

空中店舗が「不利」とされる主な理由は視認性の低さです。歩行者は通常、道路を歩く中で自然に1階の店舗を認知しますが、2階以上にある店舗は目線に入りにくいため、店舗の存在が認識されづらいというデメリットがあります。また、ビル側面に設置された看板だけでは、集客の施策として不十分であり、一見客やその場で入店を期待することは非常に難しいでしょう。

 2階以上の店舗に向く業態・向かない業態

空中店舗の成功は、その業態が立地の特性と提供価値を一致させられるかどうかにかかっています。成功の鍵は、顧客が「通りすがり」ではなく「探して行く」スタイル、すなわち目的来店型に対応していることです。

 2-1. 空中店舗で成功しやすい業態(目的来店型)

空中店舗に適した業態は、路面性よりも「滞在をする価値」や「専門性」を重視するビジネスであり、リピーターや口コミに依存する傾向があります。

成功しやすい具体的な業態

1.高級・専門飲食業態: 寿司、焼肉、フレンチ、あるいは専門性の高いラーメン店やエスニック料理などです。これらの業態では、路面性よりも「静かで落ち着いた環境」や「プライベート感」が重要視されます。賃料を抑えて内装やサービスにこだわることで、高い顧客満足度とリピート率を実現できます。

 2.隠れ家志向の店舗・エンタメ性のある店舗: バー、ラウンジ、コンセプトカフェ(例:猫カフェ、シーシャカフェ)などがこれにあたります。非日常の空間を演出しやすく、ある程度のアクセス障壁があるからこそ「知る人ぞ知る」という特別感や隠れ家感を高めることができるのです。

3.プライバシー重視のサービス業: 美容サロン、脱毛、薄毛治療など、顧客が人目を避けてサービスを受けたいコンプレックス関連の店舗です。これらの場合、視認性の低さは逆に顧客にとってのプライバシー保護となり、安心感というメリットに変わります。

これらの業態であれば、あえて隠れ家的な場所にあるという特別感を演出し、高単価でも選ばれるブランド力を築くことができます。顧客は「場所の不便さ」ではなく、「そこで得られる体験の希少性」に価値を見出すため、内装やサービス設計が立地戦略そのものとなるのです。

2-2. 空中店舗が不向きな業態(衝動来店型)

不向きな業態とは、集客を「通りすがり」の利便性に大きく依存し、立地のハンディキャップを克服できるほどの付加価値を提供しにくい業態を指します。

不向きな具体的な業態

1.ランチ需要中心のカジュアルカフェや定食店: 通行客を拾う必要性が高く、特に昼食時などの限られた時間帯に階段やエレベーターの利用といった入店障壁があると、売上の変動が大きくなります。高回転率が求められる業態とは相性が悪いです。

 2.衝動的な購買を狙う物販店: 店内の様子が通行人から見えない、気軽に入店しにくいという特徴から、通行人の興味を引く店頭ディスプレイの効果が発揮できず、一見客の獲得が困難です。

 3.高頻度の利用・高回転率重視のテイクアウト/デリバリー専門店(路面での受け渡しが主の場合): アクセスの不便さが、顧客や配達員の効率を低下させる可能性があります。

 特に新規出店となる1号店では、知名度が低く集客が難しいため、衝動来店型の業態で空中店舗を選ぶと、失敗する可能性が高くなります。

空中店舗を選んだ方が成功率が上がるケース

空中店舗を選択する最大のメリットは、賃料が1階店舗に比べてかなり安いということです。代わりにWeb集客コスト(ウェブ広告、MEO対策〔Googleマップで上位表示を狙う対策〕など)に資金を振り替えることで、トータルの集客効率を最適化するという戦略的な選択が可能になります。

私がここ数年、都心部の繁華街で空中階への出店をサポートしてきた感覚としては、1階路面店と比較して空中階店舗の賃料はおおむね1/2〜2/3程度、物件取得費用(敷金・礼金・保証金など)は約1/3程度に収まるケースが多いです。

比較項目

1階路面店

空中店舗(2階以上)

経営戦略上の意味合い

月額賃料相場

高い

1/2~2/3程度に抑制可能

低リスクでの好立地確保

初期取得費用

非常に高い(3倍程度)

大幅に抑制可能

初期投資の早期回収、運転資金の確保

集客の難易度

低い(自然集客力がある)

高い(広告宣伝の負担増)

宣伝費への集中投資が必須

提供価値

利便性、即時性

滞在価値、特別感、プライバシー

競争軸の転換

また、初期費用を抑えることで、内装や特殊な設備の導入に資金を集中させ、競合と差別化できる店舗の世界観を構築することも可能です。

例えば、

・都心部の焼肉店(20坪・3階)のケースでは、当初検討していた1階路面店から空中階物件へ切り替えることで、物件契約前の初期費用を約260万円圧縮できた。

・その分を排煙設備と内装デザインに投資した結果、開業初月から黒字化を達成した。

などが挙げられます。

3-1. 内装・ブランディングへ投資することもできる

空中店舗の賃料メリットは、高単価で満足する体験を提供するための原資として捉えることもできます。

路面店は通行人の目を意識した無難なデザインになりがちですが、空中店舗は通行人の目が少ないため、内装デザインやコンセプトに最大限の投資を行い、「隠れ家感」や「非日常の感覚」を徹底的に演出することが可能です。

デザイン戦略は、店舗ブランディングと集客の起点となります。顧客は来店前にInstagramやGoogleマップで店舗を検索することが増えており、「写真映えする外観や内装」は集客の資産になるのです。削減した賃料分を、高品質な内装、特別な照明、高付加価値なサービス(人件費や食材費)に投資することで、顧客の「滞在価値」が向上します。これにより、リピート率と口コミ評価が高まり、物理的な集客の不利を、高い収益性という強みに変換できるのです。

空中店舗を成功させるためのチェックポイント

空中店舗の成功は、地上から店舗入口までの「導線」と「視覚的アピール」の設計精度によって決まります。この設計が不十分だと、せっかく広告費をかけて集客した顧客がビル前で離脱してしまうことになります。

4-1. 看板(ファサード)での第一印象の設計 

地上に設置する看板や、ビルに取り付けるファサード(正面の外観)看板は、通行人に足を止めさせ、店舗に関心を持たせるための最初の、そして最も重要なコミュニケーションツールです。

1.昼夜の視認性の設計: 看板は日中と夜間の見え方を分けて設計することが不可欠です。日中は文字の視認性を重視し、夜間は照明や間接光を使用し、雰囲気を演出することで、ビル全体の中でも「印象に残る存在」にする必要があります。

2.デザインと材質の活用: ステンレス切文字は高級感と重厚感があり、ブランドイメージを高めます。また、チャンネル文字(箱型の立体文字看板)は、内部にLEDライトを組み込むことで夜間でも高い視認性を確保でき、特に飲食店や小売店で人気があり。

3.メニューの魅力を伝える看板: 店名だけでなく、看板メニューの写真を大きく載せて「何の店か」を0.5秒で伝える。このビジュアル設計が、「上がってまで行きたい店」と感じさせる成功の分かれ目となります。

4.地上に設置の工夫: 通行人が立ち止まるポイント(信号待ち、交差点、コンビニ前など)を意識して、宣伝ボードや階段前のフラッグ・バナーを設置し、上階への導線を自然に誘導することが効果的です。

4-2. 導線とエレベーターの位置:お客様を迷わせない

 物理的なアクセス障壁を乗り越えて来店を決意した顧客が、ビル内で迷ったり、不快になったりして離脱するのを防ぐことが、空中店舗の集客における最優先の課題です。

お客様目線における導線の設計の徹底

1.ビル入口の明確な表示: ビル入口にフロア案内サインを設置し、階数と方向を明確に表示することは基本です。加えて、初めて訪れるお客様がビルを見つけやすいよう、分かりやすく入りやすいビルを選ぶことも重要となります。

2.ビル内の継続的な誘導: 階段やエレベーターホール前には小型サインやフロア誘導パネルを設置し、顧客の視線が途切れないよう継続的に誘導します。夜間は足元照明や誘導灯で安心感を演出しましょう。

3.デジタル誘導の併用: 近年では、デジタルサイネージ(電子看板)やQRコード付き看板を設置し、SNSやメニューサイトへ誘導するケースも増えています。リアルとデジタルを連動させることで、「見つけやすく・入りやすい店」という印象づけが可能になります。

共用部の管理体制の確認

 見過ごされがちですが、共用部の管理体制は空中店舗にとって極めて重要なチェックポイントです。エントランス、エレベーター、通路などの共用部の清掃・管理が行き届いているかどうかは、テナント側ではコントロールできませんが、顧客が受ける初期の印象を大きく左右します。

共用部が汚れていたり、他のテナントが空室だらけで寂しい雰囲気であったりすると、顧客は「このビルに入居している店舗の質も低いのではないか」という不信感を抱き、入店の意欲が低下します。したがって、賃貸を契約する前に、あらためて管理体制をしっかり確認しておくと、集客の努力を無駄にせず、安定した運営に繋がります。

まとめ:空中店舗は戦略次第で最強の選択肢になる

 2階以上の空中店舗は、これまでの商業不動産の観点から見れば、視認性とアクセスの面で不利であることは事実です。しかし、現代において、この「不利」は克服不可能なものではありません。むしろ、賃料や初期投資の大幅な削減という財務的メリットを活かし、戦略的に集客へ再投資することで、路面店では獲得しえない高収益体質を築くことが可能です。

空中店舗を成功に導くための3つの鍵を改めて確認します。

1.業態の一致(目的来店型): 衝動来店を期待せず、高い「滞在価値」と「専門性」を提供できる業態を選定し、リピーターと口コミの比率を高める。

2.コストの戦略的転換: 削減した賃料を、内装デザイン、デジタルマーケティング(MEO、SNS)、そして高視認性の看板設計に集中投資する。

3.導線の最適化を徹底する: ビル入口から店舗まで、顧客を迷わせず、ストレスを与えない誘導設計(サイン計画と共用部の清潔さ)を徹底する。

空中店舗は、単に「家賃が安いから」という消極的な理由で選ぶ場所ではありません。それは、「低固定費で、最高の立地を確保し、内装とブランドに集中投資できる、戦略的な成長の器」です。この特性を理解し、上記のチェックポイントを徹底して実行する計画に落とし込めば、あなたのビジネスにとって空中店舗は、間違いなく最強の選択肢となるでしょう。

「自分の業態は空中店舗と相性が良いのか?」「どの賃料水準なら無理なく戦えるのか?」といった具体的な判断に迷われている方は、ぜひ、TEMPOLYにご相談を。

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よくある質問

Q1. 1号店から空中店舗に出店するのは、やはりやめておいた方がいいですか?

A1. 絶対にNGというわけではありませんが、「衝動来店型」の業態で1号店を空中店にするのはリスクが高いです。一方で、予約制の飲食店や美容サロンなど、目的来店型かつ単価が高めの業態であれば、空中店舗の賃料メリットを生かしやすく、1号店でも十分に検討の余地があります。業態と集客設計をセットで考えることが重要です。

Q2. 空中店舗を選ばない方がいい業態は何ですか?

A2. ランチ需要中心のカジュアル飲食店、テイクアウト主体で回転率を重視する業態、店頭ディスプレイで衝動買いを促す物販店などは、空中店舗との相性が良くありません。こうした業態では「通行量」と「視認性」が売上に直結するため、上階というハンディキャップを埋めるのに必要な広告・販促コストが過大になりやすいからです。

Q3. 看板やファサードの工夫だけで、空中店舗の集客は本当に改善できますか?

A3. 看板だけで路面店と同じレベルの「自然集客」を実現するのは難しいですが、適切なサイン計画を行うことで、『ビル前まで来てくれたお客様を確実に店まで案内する』ことはできます。地上看板、ファサード、階段・エレベーターホールの小型サインを一体で設計し、さらにデジタルサイネージやQRコードでSNSやメニューサイトに誘導することで、“迷わせない導線”をつくることが重要です。

Q4. 空中店舗か路面店か、最終的にどうやって判断すればよいでしょうか?

A4. シンプルに言うと、「業態」「立地」「資金計画」の3点をセットで見て判断します。目的来店型で単価が高い業態かどうか、路線や駅からの導線が素直かどうか、固定費と集客投資のバランスが無理なく組めるか——これらを数値とシミュレーションで確認していくイメージです。自分たちだけで判断が難しい場合は、TEMPOLYにぜひご相談を!

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