はじめまして。テナント仲介サービスTEMPOLYの井関です。TEMPOLYでは普段、都内を中心に、 毎月400~500件の物件情報データ更新を行い、常時掲載している2000件以上の物件情報の中から様々なオーナーさんの条件に合う物件探しを支援しております。独自の人流データや商圏分析データに強みのあるTEMPOLYでは、家賃や坪数だけで判断せず、適正家賃か、エリアの人流はどうか、など商圏の動きもセットで見て、勝ち筋があるかを一緒に検討しています。
「物件契約までは進んだけど、厨房機器って結局どれを買えばいいの?」
「新品は高すぎるし、中古ですぐ壊れて営業停止になるのも怖い……」
オーナーさんから、そんな相談を受けることもあります。
そこでこの記事では、厨房設備選びで後悔しないために必要な知識を、プロの目線でまとめました。まず揃えるべき必須機器のリストアップから、あなたの業態に合わせた厨房機器の選び方、作業効率を最大化する動線とレイアウト、見落としがちな保健所・法令対応まで、開業前に知っておくべき全情報を網羅しています。
この記事を読み終える頃には、あなたの頭の中には「無駄なコストを抑えた理想の厨房」の設計図ができあがっているはずです。お店の心臓部ともいえる厨房づくり。失敗のリスクをゼロにして、最高のスタートを切るために、ぜひこのチェックリストを活用して一つひとつクリアしていきましょう!
厨房選びで「利益」が決まる
多くの人はコンセプト作りや内装に気持ちが向きやすいですが、厨房は料理を生み出す場そのもので、店の力を決める中心です。厨房選びの失敗は、そのまま「毎月の赤字」に繋がります。 提供スピードが遅れてランチの回転数が落ちたり、使いにくい動線でスタッフが辞めて採用コストがかさんだりするためです。内装よりも先に、厨房への投資配分を決める必要があります。
たとえば、ピークに提供が遅れる店の多くは機器の力不足が原因になります。フライヤーの油がすぐ冷める、コンロの口が足りないなど、小さな差が大きなロスにつながります。新人スタッフだけの問題ではありません。
開業後に後悔する「3大失敗パターン」と回避策
開業時の設備費は大きな出費です。ここで判断を誤ると、「修理・買い直し」と「営業ストップ」で、結果的に損が膨らみます。よくある失敗は次の3つです。
失敗①:安さ優先で選び、すぐ壊れる
家庭用の冷蔵庫など、安い機器で済ませると、繁忙期に故障して食材がダメになり、営業も止まることがあります。「業務用として必要な耐久性・容量」を満たすものを選びましょう。初期費用が少し上がっても、止まらないことが一番の節約です。
失敗②:高機能に寄せすぎて、他の予算が足りなくなる
逆に、高すぎる機器を買って資金が尽きる失敗もあります。たとえば高機能オーブンに予算を寄せすぎて、広告費や運転資金が足りなくなるケースです。「今のメニューに必要な性能」までに絞りましょう。必要以上のスペックは、売上が安定してから追加で検討します。
失敗③:設置・搬入まで考えず、開店直前に詰む
厨房機器は後から入れ替えるのが大変です。製氷機は排水口の位置が少し違うだけで置けないことがありますし、脚が短いタイプだと排水ホースが通らず工事が必要になることもあります。大型冷蔵庫やオーブンは、内装後だと入口を通らず、カウンターなどを一度壊して搬入する事態も起こります。購入前に「寸法」「搬入経路」「排水・電気・ガス位置」を確認しましょう。図面で確認し、必要なら現地で採寸します。
設備は「安い・高い」ではなく、今の運営に必要で、将来の変化にも対応できるかで選ぶのが安全です。「メニューが増えるかもしれない」「機器を買い足すかもしれない」まで想定しておくと、後悔が減ります。
【全業態共通】最低限揃えるべき必須機器リスト
どの業態でも共通して必要な「基本の三種の神器」+αを紹介します。これらは営業許可を取るためにも必須の設備です。
調理機器
調理機器は料理を作る中心です。すべての作業はここから生まれます。ここを軽く見ると、ピーク時に料理が遅れます。初めての店ほど、しっかり選ぶ必要があります。
ガスレンジ(火力重視)かIH(涼しさ・清掃重視)か
ガスレンジは火力が強く、鍋を振る料理に向きます。中華やラーメンでは必須です。都市ガスかプロパンかを間違えると使えないので、物件のガス種を最初に確認します。
IHは熱が外に逃げにくいため、厨房が暑くなりにくいです。ビル内や地下ではIHを求められることがあります。掃除もしやすいです。ただし、使える鍋が限られます。
オーブン・スチームコンベクションオーブン(スチコン)
スチコンは 「焼く・蒸す・煮る」を1台でこなせます。アルバイトでもボタン一つでローストビーフや茶碗蒸しをプロの品質で作れるため、調理スタッフの技術差を埋めるのに最適です。ただし、水道や電源の工事が必要になるため、導入前に見積もりを取りましょう。
フライヤー
揚げ物を出す店なら必ず必要です。油温が落ちにくく、仕上がりが安定します。油量が多いほど一度に揚げられます。小さな店でも消火器の設置が必要です。
TEMPOLYからのアドバイス: ランチタイムに揚げ物をメインにするなら、絶対に「油量」をケチらないでください。冷凍食材を入れた瞬間に油温が下がると、揚がるまで待ち時間が発生し、ピーク時の回転数が落ちて売上が下がります。
冷機・保存機器
食材の管理は店の信用にもつながります。冷機はケチると食材ロスが増え、結局損をします。
縦型冷凍冷蔵庫
食材のストックに必要な機器です。扉の数や冷凍と冷蔵の配分は、食材の使い方で決めます。通路が狭い店では、扉の開き方が動線の邪魔にならないよう注意が必要です。狭い厨房だと、引き戸タイプは重宝しますよ。
コールドテーブル
作業台と冷蔵庫がひとつになった機器です。小さな厨房でも使いやすく、飲食店ならほぼ必ず導入されるでしょう。盛り付けする場所の近くに設置すれば、厨房内での動きが減り作業が早くなります。引き出し式は食材を見つけやすくて便利です。
製氷機
氷が切れると提供が止まってしまうため、ドリンクを出す店では必須の機器です。客席数の1.5倍を目安に能力を決めるとよいでしょう。
TEMPOLYからのアドバイス: 迷ったらワンサイズ上が正解です。(例:20席なら30kgではなく、余裕を持って45kgを選ぶ)。夏場、ランチ時間に氷がなくて営業停止に……という事態は避けなくてはなりません。
洗浄設備・収納・清掃まわり
衛生面は営業許可に関わるため、見落としは大問題になります。
業務用シンク
多くの自治体では2槽シンクの設置が義務付けられています。これは、食材と食器の洗い場を分けるためです。サイズも細かく決められている場合があるので、家庭用シンクはそのままでは使えないと思っておきましょう。
手洗い設備
調理専用の手洗い設備も必須です。レバー式やセンサー式など、手で触らずに使えるものが求められます。ディスペンサーの用意も忘れないようにしましょう。
食器棚・吊り戸棚
埃や虫を防ぐため、食器は扉付きで保管しなければなりません。オープン棚だけだと自治体から指導を受けるケースがあります。
食器洗浄機
洗浄機は時短になります。1分ほどで洗えるため、手洗いとは比べ物になりません。水道とガスの節約にもつながります。店の大きさでタイプを選びます。
グリストラップ
油脂を排水に流さないためのろ過装置です。これがないと配管が詰まるということもあり、多くの自治体で設置が義務付けられています。物件に設置されていない場合、工事費が高額になるため、必ず契約前にグリストラップの有無を確認しておいてください。
業態別の優先順位(ラーメン・イタリアン・居酒屋)
飲食店に「万能な厨房」はありません。業態やメニューで必要な機器は大きく変わります。初めて店舗を運営する人は、まず自分の店で何を作るかをはっきりさせましょう。ここでは具体例を交えて、選ぶべき設備を紹介します。
ラーメン店・中華料理店向けの必須機器
- 中華レンジ(バーナー): 一般的なガステーブルでは火力が足りません。ジェットバーナーやブロワー付きなら、チャーハンや野菜炒めを短時間で作れます。水冷式なら厨房の熱さ対策にもなります。
- ゆで麺機(ラーメン釜): 丸釜タイプや角型タイプがあります。ピーク時でも湯の温度が下がらず、自動リフトアップ機能付きならアルバイトでも安定した茹で加減が再現できます。
- 寸胴鍋用ローレンジ: 高さ約45cmの低め設計は、重い寸胴鍋を移動しやすく、腰への負担を軽減します。作業効率が上がり、労働環境も改善されます。
イタリアン・洋食店向けの必須機器
- パスタボイラー: 塩分入りのお湯にも耐える高級ステンレス製がおすすめ。再沸騰までの時間が短い機種なら、オペレーションがスムーズです。
- コンベクションオーブン・スチコン: ピザやグラタン、ロースト料理など多用途に使えます。ピザ専門店なら電気式・ガス式・薪窯の選択肢があります。
- サラマンダー: 上火式の加熱機で、食材の水分を飛ばさずに表面だけをカリッと仕上げます。グラタンや焼き目を付ける料理に最適です。
居酒屋・焼き鳥店向けの必須機器
- グリラー(焼き物器):炭火式・ガス式・電気式があります。炭火は香りが良く、ガスは扱いやすい。煙対策として排気ダクトの設計も重要です。食材によって下火式・上火式を使い分けます。
- フライヤー・分子調理器:揚げ物の品質を保ちながら油の劣化を防ぎます。コスト削減と品質向上に有効です。
- ブラストチラー(急速冷却機):仕込み料理を素早く冷却し、菌の繁殖を防ぎます。鮮度を保つため、HACCP対応にも役立ちます。
カフェ・喫茶店向けの必須機器
- エスプレッソマシン:半自動式で技術を活かすか、全自動式で安定抽出するかを選びます。電圧や給排水の接続位置にも注意が必要です。
- 製氷機(特殊氷):アイスコーヒーやスムージーで氷の消費量が多い場合、容量をワンランク上にします。透明度の高い氷がドリンクの価値を上げます。
- コールドテーブル:作業台としても使え、サンドイッチやデザートの盛り付けに便利です。上にはミキサーやトースターなど小型調理家電を置けます。
商品の提供形態にも注意
テイクアウトやデリバリーを行う場合は、広めのパッキングエリアが必要です。注文が重なってもスムーズに作業できるスペースがないと、パニックになりやすくなります。また、料理の温度を保つための保温や保冷設備も欠かせません。容器やカトラリーなどのストックヤードも十分に確保しておくと、作業効率が上がり、衛生管理もしやすくなります。
セルフサービスや対面販売の店では、冷蔵・温蔵ショーケースで商品を美味しそうに演出することが大切です。さらに、厨房と客席の動線を分離するパススルー機器を設置すれば、スタッフが頻繁に厨房に出入りする必要がなくなり、衛生面の管理も簡単になります。
効率が劇的に変わる動線設計と配置のルール
どんなに高性能な機器を揃えても、配置が悪ければ効率は落ちます。初めて店舗を運営する人は、人の動きに沿ったレイアウトを意識しましょう。ここでは具体例を交えて、動きやすい厨房作りのポイントを解説します。
10坪以下の狭小店は「コックピット型」で配置する
小規模店(10坪前後)の店舗では、厨房面積は2〜3坪程度に限られます。限られたスペースを有効活用するには、「コックピット型」のレイアウトが有効です。
- 空中収納(吊り戸棚・パイプ棚):作業台の上部空間を捨てずに使います。ザルやボウルは「頭上の棚」へ、調味料は「目の前の壁面」へ配置することで、一歩も動かずに調理を完結させます。作業台下にコールドテーブルを置くと、移動せずに食材の出し入れや加熱が可能です。
- 多機能機器の採用:スチコンなど1台で複数調理ができる機器を導入しましょう。シンク上にスライド式まな板を置けば、一時的に作業スペースを増やせます。コンロ下の収納も有効です。
- 機器の奥行きを統一:奥行き450mm、600mm、750mmなどを揃えると前面ラインが整い、通路幅を確保できます。小規模店では600mmか450mmのスリムタイプが主流です。
調理・盛り付け・洗浄の流れを最適化
厨房の作業は、食材搬入から洗浄までの一連の流れを「一筆書き」で設計すると効率が上がります。
- ワークトライアングル:冷蔵庫、シンク、コンロの3点を三角形に配置すると作業がスムーズです。1〜2人で回す厨房では、体を少し回すだけでアクセスできる距離感が理想です。
- パスライン(デシャップ)の確保:調理した料理をホールに渡す場所に、カトラリーや伝票、トッピング類を集約します。ここが詰まると料理が冷めてしまうため、顧客満足度が下がります。
加熱・冷・洗浄のゾーン分け
衛生と安全の両方を守るにはゾーン分け(ゾーニング)が必要です。
- 汚染区域(洗浄・下処理):泥付き野菜の洗浄、生肉・生魚の処理エリアです。調理済みの食品から離すか、アクリル板などで仕切ります。
- 非汚染区域(調理・盛り付け):加熱後の料理や生食用の刺身、サラダを扱います。洗浄エリアからの水しぶきが飛ばないよう注意します。
- 通路幅の確保とすれ違い:スタッフ人数に応じた幅を設定します。1人作業なら75〜90cmが目安です。2人以上ですれ違う場合は90〜120cmが適切です。120cmを超えると歩行距離が長くなり、かえって効率が落ちます。
新品・中古・リースの費用対効果と使い分け
厨房機器の導入方法は、新品購入・中古購入・リース契約の3つがあります。開業時の資金計画や長期的な利益に大きく影響するため、慎重に選ぶ必要があります。
ここでは、それぞれの特徴を表にまとめて比較します。
|
項目 |
新品購入 |
中古購入 |
リース契約 |
|
初期費用 |
高い(一式 200万〜500万円目安) |
安い(一式 50万〜150万円目安) |
0円〜低い(月額支払い) |
|
ランニングコスト |
低い(最新省エネ性能) |
高い可能性(旧型・劣化) |
低い(新品を使用するため) |
|
保証・修理 |
メーカー保証(1年〜) |
短期保証または現状渡し |
動産保険付帯・保守契約可 |
|
所有権 |
自店 |
自店 |
リース会社(契約終了後も返却) |
|
税務処理 |
減価償却資産 |
減価償却資産 |
全額経費計上 |
新品購入のメリット・デメリット
最新のインバーター制御などの技術が搭載され、10年前のモデルに比べ電気代を30〜50%削減できる場合があります。通常1年間のメーカー保証が付き、初期不良のリスクも低く、店舗の寸法にぴったり合うサイズや扉の開き勝手も自由に選べます。一方、一括購入ではまとまった現金が必要となり、開業時の運転資金を圧迫する可能性があります。
中古購入のメリットと注意点
中古機器は定価の数分の一で購入でき、初期投資を大幅に抑えられます。一方で故障リスクが高く、冷蔵庫や製氷機の重要部品が壊れると修理費が新品並みに膨らむ場合があります。製造終了から9年以上経過した部品は修理できないこともあるため、故障しにくいシンクや作業台などは中古で揃え、冷機や熱機のように故障や電気代の影響が大きい機器は新品で揃えると安全です。
リース契約のメリットと注意点
リース契約なら初期費用ゼロで新品を導入できます。月々の支払いは全額経費に計上できるため、節税効果やキャッシュフロー改善が期待できます。多くの場合、火災や落雷、盗難などの不測の事故をカバーする保険が付帯しています。
リース契約のデメリットは「閉店しても支払いが残る」こと。 リースは原則、途中解約ができません。万が一早期に撤退することになっても、残債の一括返済を求められるリスクがある点は必ず押さえておいてください。所有権はリース会社にあるため、勝手に売却や処分はできない点も注意が必要です。
ランニングコストの見込み方
購入後にかかるコストも重要です。電気代、ガス代、水道代、メンテナンス費用を含め、機器ごとのライフサイクルコストを計算しましょう。
- 省エネ性能の差:業務用冷蔵庫は24時間365日稼働するため、古い機種はカタログ値以上の電気代がかかる場合があります。
- ガス種と熱効率:都市ガスはプロパンより安価ですが、物件によって選択肢が限定されます。熱効率の良い機器は空調費削減にも役立ちます。
- 水道代と節水:節水型食器洗浄機や自動水栓の活用で、水道代と下水道料金を抑えられます。特にラーメン店のゆで麺機は大量の水を使うため、水管理はコストに直結します。
保健所の許可を一発で通すための設備要件
飲食店の開業には、保健所からの営業許可が必須です。内装工事後に基準不適合を指摘されると、追加改修費や開業遅延の原因になるため、事前確認が重要です。
シンク・手洗い・給湯設備の整備
- 2槽シンクの設置:食器洗浄用と食材洗浄用を明確に分ける必要があります。自治体によっては「幅45cm×奥行36cm×深さ18cm以上」といった規定があります。家庭用シンクでは許可が下りない場合があります。
- 従事者専用手洗い設備:調理場内に専用の手洗い設備(L-5型など)を設置し、水栓は「レバー式」「センサー式」「足踏み式」が必要です。サイズ規定もあり(幅36cm×奥行28cm以上)、石鹸ディスペンサーも必須です。
- 給湯設備:洗浄・消毒のため、シンク・手洗い場ともにお湯が使えることが条件です。瞬間湯沸かし器や電気温水器の設置が必要です。
換気・防火・排気・排水の設備
- フードとグリスフィルター: コンロやフライヤーなどの上部には不燃材の排気フードを設置し、グリスフィルターで油脂分を除去します。可燃物との距離や防熱板の設置も必要です。
- 換気量計算と給気:ガス機器の総発熱量に基づき、排気ファンの風量を計算します。給気不足は排気逆流やドア閉塞の原因となるため、給気計画も重要です。
- 自動消火装置の設置:フライヤーなど火気設備には温度過昇防止装置が必要です。ダクト火災対策として、簡易自動消火装置の設置が推奨または義務付けられています。
衛生管理・食品安全
- 温度管理:冷蔵庫・冷凍庫には外部から確認できる温度計が必要です。家庭用冷蔵庫使用時は別途隔測温度計を設置します。
- IoTによる自動管理:ACALAやハサレポなどのシステムで温度を自動記録・保存し、異常時にアラート通知。手書き記録の手間と改ざんリスクを排除できます。
- 交差汚染防止:まな板や包丁を肉用(赤)、魚用(青)、野菜用(緑)、加熱済み食品用(白)など色分けして管理します。殺菌庫での衛生的保管も重要です。
衛生・安全設備は「あとから追加」が最も難しい箇所です。設計段階で保健所の基準をクリアしておけば、開業直前の検査で焦ることはありません。
オペレーション効率と現場での使いやすさ
「良い厨房」とは、ハイスペックな機器が並んでいるだけでなく、スタッフがストレスなく無駄なく動ける厨房です。作業効率、清掃性、使いやすさを考慮した設計が重要です。
スタッフ動線と通路幅
- 1人作業(ワンオペ)の場合:通路幅は75cm〜90cmが最適です。振り返ってすぐ後ろの台に手が届き、無駄な歩行を減らせます。
- 2人以上ですれ違う場合:通路幅は90cm〜120cmが必要です。背中合わせで作業してもぶつからず、後ろをトレイを持ったスタッフが通れます。120cmを超えると、一歩踏み出さないと後ろの台に届かず、無駄な動きが増えます。
※70cm未満は危険です。熱い鍋を持ってすれ違う際に接触し、火傷などの労働災害につながるリスクがあります。
- 高さの統一:作業台、コールドテーブル、シンクを一般的に800mm〜850mmに揃えると、トレイやまな板の横移動がスムーズになり作業効率が向上します。
「掃除のしやすさ」はスタッフの定着率を守る
「掃除がしにくい場所は必ず汚れる」という鉄則があります。清掃性を考慮した設備選びが、長期的な衛生維持の鍵です。
- 脚とキャスター(ドライ厨房):アジャスト脚やキャスター付き機器なら、女性スタッフでも簡単に移動させて裏側を清掃できます。床に水を撒かない運用と組み合わせると、害虫発生を抑制できます。
- R加工と隙間埋め:シンクの角を丸めたR加工を施したり、機器と壁の隙間をコーキングやステンレス板で埋めておけば、汚れやゴミの滞留を防ぎ掃除が容易になります。
- グリストラップの清掃性:グリストラップ清掃は、スタッフが最も嫌がる「3K(きつい・汚い・危険)」作業の一つです。「バスケットが浅くて取り出しやすいタイプ」や「床置き型」を選ぶことは、単なる時短ではなく、スタッフの離職を防ぐことに繋がります。
調理スピードとピーク時対応
- ピーク時のシミュレーション:1時間で何食出るかを想定し、フライヤーの油量やコンロの口数を決めます。
例:揚げ時間4分の唐揚げを60食作る場合、一度に揚げる個数やフライヤー槽のサイズを計算します。 - 予備能力(バッファ)の確保: 常に100%稼働では、機器への負荷が高く故障リスクも増します。能力に2割程度の余裕を持たせることで、食材温度も安定し、突発的な注文にも柔軟に対応できます。
スタッフの動線・通路幅・高さ、清掃のしやすさ、機器の配置や能力余裕を考慮することで、効率的で安全な厨房運営が可能になります。
5年後に差がつく!メンテナンスと拡張性の考え方
飲食店の開業はスタートラインに過ぎません。長く安定して運営するためには、機器選びの段階で耐久性、保守性、将来の拡張性まで見据えることが重要です。
修理で営業を止めないためのメーカー選び
- 法定耐用年数と実寿命:税法上の法定耐用年数(例:冷蔵庫6年、調理機器8年、接客用家具5年)は減価償却の基準です。しかし、定期的なメンテナンスを行えば10年以上使える場合もあります。ドアパッキンやフィルターなど消耗品の定期交換は必須です。
- アフターサービス網:厨房機器が金曜日の夜や祝日に限って壊れるのは飲食店のあるあるですよね。そのため、「土日祝日でも修理に来てくれるか?」はメーカー選びの最重要ポイントです。国内大手(ホシザキ、フクシマガリレイ等)が選ばれる理由は、このメンテナンス網の強さにあります。海外製やネット専売品は修理対応に時間がかかるリスクがあり、「故障したその日の夜に直せるか」が飲食店運営では重要です。
将来のメニュー変更・業態変更を見据えた拡張性
- 専用機より汎用機:餃子焼き機や焼き芋機などの専用機は特定メニューに特化します。スチコン、フライヤー、グリラーなど汎用性の高い機器を選ぶことで、メニュー変更や新商品導入時にも柔軟に対応できます。
- 拡張スペース・インフラの余裕:最初は導入しなかった機器(例:真空包装機、ブラストチラー)を後から追加できるよう、電気容量、ガス栓、スペースに余裕を持たせると、経営が軌道に乗った後のステップアップ投資が容易になります。
長期的な維持管理コストの把握
- 保守契約の活用:一部メーカーやリース会社では、定期点検と修理費を含む保守契約を提供しています。月額費用は発生しますが、突発的な高額修理を防ぎ予算を平準化できます。
- 消耗品・清掃コスト:冷蔵庫のコンデンサーフィルター清掃、浄水器カートリッジ交換、フライヤーの油交換など、日常のメンテナンスもコストと手間に含める必要があります。清掃不足は電気代増加や機器寿命の短縮につながるため、スタッフへの清掃オペレーション教育とセットで考えましょう。
厨房設備選びで利益を残すための3つの鉄則
厨房選びは、単なる機器の購入ではなく、将来にわたって利益を生み、スタッフを守るための投資です。
最後に、これだけは外せない「失敗回避の3つの鉄則」をおさらいします。
- 予算配分は厨房から:内装デザインにお金をかける前に、まずは厨房機器(新品・中古・リース)の予算を確保してください。「見えない場所」のスペック不足は、提供遅れによる機会損失に直結します。
- 動線が寿命を決める:10坪以下なら「コックピット型」、広ければ「ワークトライアングル」を意識しましょう。スタッフが一歩も動かずに作業できる環境が、離職率を下げます。
- 法令対応は「契約前」に:シンクのサイズや手洗い器の仕様など、保健所の基準は絶対に妥協できません。物件を契約する前に、必ずメジャーを持って現地を確認してください。
これらさえ守れば、開店後に「工事のやり直し」や「使いにくくてスタッフが辞める」といった最悪の事態は防げます。
「この物件、家賃はいいけど厨房が狭すぎるかも?」 「居抜き物件の機器、これってまだ使えるの?」 そんな疑問が湧いたら、契約のはんこを押す前にTEMPOLYにご相談ください。その物件で本当にやりたい店が作れるか、プロの目でジャッジします。

