みなさん、こんにちは!
テナント仲介サービスTEMPOLYの井関です。TEMPOLYでは普段、都内を中心に、 毎月400~500件の物件情報データ更新を行い、常時掲載している2000件以上の物件情報 の中から様々なオーナーさんの条件に合う物件探しを支援しております。独自の人流データや商圏分析データに強みのあるTEMPOLYでは、家賃や坪数だけで判断せず、適正家賃か、エリアの人流はどうか、など商圏の動きもセットで見て、勝ち筋があるかを一緒に検討しています。
この業界にいると、「店を畳むのに、さらに300万円も解体費がかかるなんて…」「設備も内装もまだ使えるのに、何百万円もかけて壊すなんてもったいない」と、撤退時に頭を悩ませる経営者の声をよく耳にします。
せっかくまだまだ使える厨房設備が揃っているのに壊してしまうなんて、あまりにもったいないですよね。
そんな悩みには、造作譲渡(居抜き売却)の利用がオススメです。これは、撤退にかかる費用が収益に変わる唯一の方法です。
今回の記事では、造作譲渡の基礎から貸主との交渉ポイントまでを分かりやすく整理します。スケルトン戻しとの費用差や適正な譲渡金の考え方のほか、契約トラブルを避けるためのチェック方法も紹介していますよ。
この記事を読めば、「撤退」が前向きな言葉に変わりますよ。
物件売却を考えているなら、造作譲渡と居抜き売却の意味を知っておこう
店舗の撤退時に必ず聞くことになる言葉「造作譲渡」「居抜き売却」。何だか聞き馴染みのない言葉ですが、これらは店舗の引き継ぎをスムーズに進めるために超重要な仕組みです。
これらの内容を理解していないと、売る側も買う側も余計な手間や費用に悩まされることになってしまいます。正しい造作譲渡の進め方と居抜き売却の仕組みを、順を追って見ていきましょう。
そもそも、「造作譲渡」「居抜き売却」って?
造作譲渡とは、テナントが設置した内装や設備、机や棚などの物を、次のテナントにお金をもらって渡すことです。
居抜き売却は、この造作譲渡を前提にした店舗の売却方法です。売主は建物を元に戻す手間や費用を省け、譲渡料として収入を得られます。
造作譲渡の場合、物件を売る相手は貸主ではなく次のテナントになります。もし譲渡に貸主の承諾が必要な場合は、次のテナントの信用力や事業内容を確認することが大切です。
これらの仕組みを理解しておくことで、売る側も買う側も手続きをスムーズに進め、余計な費用やトラブルを避けられます。
造作譲渡を成立させるには2種類の契約が必要
造作譲渡を成立させるには、2種類の契約を進める必要があります。
- 造作譲渡契約
これは、売主と買主の間で交わす契約で、造作物を誰が持つかを決めます。どの物を渡すか、いつ渡すか、いくらで渡すか、問題があったときに誰がどう責任を取るかをはっきり書きます。契約不適合責任(物件や造作物に欠陥があった場合に売主が負う責任)も明記します。 - 賃貸借契約
これは、買主が物件を借りるための契約で、売主の退去と買主の入居が同時に進む仕組みです。造作譲渡契約は、賃貸借契約が成立することを条件にしておく必要があります。もし賃貸契約が成立しなければ、造作譲渡契約も解除され、売主は建物を元に戻す(=原状回復)義務を負うことになります。
リスクを避けるために、造作譲渡契約には次の内容を盛り込むのが一般的です。
- 賃貸契約が成立しなければ契約を無条件で解除できること
- 売る人が元に戻す費用を全額負担しなくてもよいこと
造作譲渡とスケルトン売却、どっちを選ぶべき?
造作譲渡とスケルトン売却、どちらを選ぶかで費用や手間、リスクの大きさが大きく変わります。これを理解していないと、売る側も買う側も余計な費用やトラブルに悩まされることになります。両者の違いを、順を追って見ていきましょう。
スケルトン売却のコスト内訳
スケルトン売却(原状回復)を選んだ場合、以下のような費用がかかります。
- 内装の解体
- 厨房機器や排気ダクトの撤去
- 電気や給排水の復旧
- 廃材の処分
- 特殊清掃(油汚れや床・壁の防水補修など)
カフェ・軽飲食の解体では5〜12万円/坪程度。大規模排気や重飲食など特殊設備がある場合は10〜15万円/坪とさらに高額になります。開業費用以上のお金がかかるというケースも少なくありません。
費用が高くなる主な理由は次の通りです。
- 厨房機器や排気ダクトの撤去などで、特殊な工事が必要になる
- 特別な清掃や防水補修が必要になる(例:居酒屋、ラーメン店など)
- 夜間作業や管理者の立ち会いが必要になり、30〜50%の割増料金が発生する(例:商業施設内の店舗など)
100㎡(約30坪)の特殊設備飲食店では、解体や清掃に最低でも300〜450万円の費用がかかると見込まれます。
特殊設備を持つ飲食店は退去時のコストに要注意
造作譲渡のメリットは、売主が高額な原状回復費用を避けられるだけでなく、譲渡料として収入を得られる点です。
買主にとっても、新しく内装や設備を入れる費用(通常は数百万円~数千万円)が大幅に減り、初期投資を抑えられます。
以下の表は、30坪の飲食店を想定した原状回復費用の試算モデルと、手元に残るお金のシミュレーションです
飲食店の原状回復費用試算モデルと居抜き売却の効果(30坪換算)
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業種区分 |
坪単価相場 (万円/坪) |
30坪の解体費用目安 (万円) |
費用が高額化する要因 |
居抜き売却になることで浮くコスト |
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標準的な飲食店 (カフェ・軽飲食) |
5〜12万円 |
150〜360万円 |
一般的な清掃、簡易な設備撤去 |
約150〜360万円 |
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特殊設備飲食店 (ラーメン・居酒屋) |
10〜15万円 |
300〜450万円 |
排気ダクト、重度の油汚れ清掃、防水工事 |
約300〜450万円 |
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商業施設内店舗 (特殊設備) |
13〜20万円 (割増30-50%) 2 |
390〜600万円 |
夜間作業割増、厳しい管理規定、特殊廃棄物処理 |
約390万円以上 (プレミアム) |
経済効果が決定する譲渡価格の戦略的基準
居抜き売却の場合、スケルトン売却の場合にかかっていたであろう原状回復費用の総額が、譲渡金の上限の目安になります。この金額を基準に交渉を進めることで、たとえ譲渡金が多少低なくなってしまったとしても、原状回復費用を払わなくて済む分、トータルで見ればスケルトン売却よりはオトクです。
特に商業施設内の店舗では、原状回復費用が非常に高額になることがあります。この場合、居抜き売却の価値は自然と高くなります。買主側も、将来店舗を閉めるときの高額な原状回復費用を考慮すると、譲渡金がやや高めでも支払う合理性があるというワケです。
造作譲渡のメリットとデメリット
造作譲渡は、売主・買主双方に大きなメリットをもたらす一方で、見落とすと高額な費用や法的トラブルにつながるリスクもあります。ここでは、両者のメリットと注意すべきデメリットを順を追って解説します。
造作譲渡における売主・買主の主なメリット
スケルトン売却の場合、飲食店の撤退時に坪単価5万~15万円という高額な費用がかかるケースが多いです。一方、造作譲渡を前提として居抜き売却は、解体費を買主に任せることができ、売主は造作譲渡料という収入が得られます。売主・買主の双方にメリットのある、戦略的な撤退方法です。
売主のメリット
- 原状回復(スケルトン返却)にかかる費用を回避できる
- 造作譲渡料として現金収入を得られる
- 解体工事期間が不要となるため、早期に賃料などの店舗運営コストから解放され、売却期間を短縮できる
買主のメリット
- 新たな内装や設備の導入にかかる初期投資を大幅に削減できる
- 工期を短縮できるため、迅速に市場に参入し競争優位を確保できる
造作譲渡におけるデメリットと買主が抱えるリスク
これだけ読むとまるで造作譲渡をゴリ押ししているようですが、造作譲渡には以下のようなデメリットもあります。
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貸主不承諾リスク:貸主の承諾が得られず取引が止まった場合、売主は建物を元に戻す義務(原状回復義務)を負います。契約前に貸主と早めに協議し、承諾を得ておくことで対策しましょう。
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設備劣化リスクと契約不適合責任:造作譲渡は中古設備の売買となるため、売主は民法上の契約不適合責任(物件や設備に欠陥があった場合の責任)を負うことになります。
譲渡契約書に以下の特約を入れることで、設備の故障を巡る紛争リスクを減らせますよ。
- 保証対象を主要設備に限定
- 保証期間を短く設定(例:引き渡し後1ヶ月)
商業用不動産に特化したポータルサイトTEMPOLYでは、造作譲渡の際の契約書の作成サポートを行っています。
買主側は、造作譲渡は設備を安価に手に入れられるものの、設備の耐用年数が減少している点を頭に入れておく必要があります。排気ダクトや空調機器などの耐用年数を厳しく評価しておかなければ、テナントを引き継いだ直後に高額な修繕費用を負担する可能性も……。リスクをきちんと把握したうえで、売却方法を選ぶことが重要です。
売却成功のための事前準備と法的な確認作業
造作譲渡およびそれを前提とした居抜き売却の場合、売却を予定通り、安全かつ有利な条件で終えることが重要です。万一契約内容や設備の所有権の確認を怠ると、取引中に思わぬトラブルが発生することも……。ここでは、売却をスムーズに進め、想定外のトラブルを避けるための具体的な方法を解説します。
賃貸借契約書は徹底的に確認しよう
売却活動の初期段階では、賃貸借契約書の詳細な確認が必要不可欠です。特にチェックすべき項目は以下の通りです。
- 原状回復義務
- 解約予告期間(契約終了の通知が必要な期間)
- 転貸や造作譲渡に関する特約の有無
解約予告期間が長くても、専門業者と協力して買主を早めに探し、貸主への承諾を同時に進めることで、賃料の支払いを減らせます。
譲渡対象の設備や内装の所有権は明確化すべし!
物件を譲渡する際は、譲渡する設備や内装に、リース物件やローンで担保になっているものがないか確認することも大切です。これは法的デューデリジェンス(権利確認の手続き)に含まれます。
リース物件を勝手に譲渡すると、賃貸契約だけでなくリース契約の違反にもなり、解決するのに一苦労する羽目になります。それを避けるために、譲渡対象の設備や内装のリストを作るのがオススメです。このリストには、次の3つを記載しましょう。
- 売主が所有していて譲渡できるもの
- リース会社が所有していて、譲渡に交渉が必要なもの
- 貸主が所有していて譲渡できないもの
とくにリース会社との交渉は、売却準備の早い段階で行うことが重要です。
必須書類の作成と専門家の活用
譲渡対象や撤去対象を整理したリストは、譲渡金の根拠や引き渡し後の責任をはっきりさせるうえでも役立ちます。
また、居抜き売却に慣れた仲介業者や物件査定の専門業者のサポートを利用すれば、取引をより安全に進められますよ。
貸主との交渉に慣れていたり、譲渡金の妥当な金額を判断できる専門家は、トラブルを避け、安心して売却を進める助けになります。
TEMPOLYでは、店舗物件に特化した不動産仲介事業を行っています。800件以上の仲介取引実績を活用し、物件売却を検討する皆様への的確なサポート提供が可能です。
譲渡金の相場と正しい価格決定の考え方
造作譲渡の売買で最も気になるのが譲渡金(造作譲渡料)の金額です。この金額の決定には、造作物の価値だけでなく、店舗の立地や契約条件などさまざまな要素が絡みます。ここでは、譲渡金の構成や算定方法、戦略的な価格設定の考え方を整理して解説します。
譲渡金の内訳と算定方法
譲渡金は、基本的に売主と買主の間で個別に決められるものです。この金額を決めるひとつの基準になるのが、造作物の市場価値(時価)です。この金額は、主に以下の要素から算出されます。
- 設備や家具を新たに揃えた場合の再調達原価
- 減価償却や使用状況による価値の減少
譲渡金は、以下のような造作物以外の価値によっても左右します。
- 店舗の立地の良さ
- 賃料の優位性(周辺相場より安い場合など)
- 現行の賃貸契約条件(長期契約可能か、更新条件など)
これらが優れている場合、譲渡金はさらに上乗せされることになります。
評価基準の明確化と戦略的な価格設定
造作譲渡の場合、買主は、帳簿上の価格がゼロ円になっている設備(排気ダクトや空調などのインフラ設備)の新設費用を回避できます。売主は、買主がスケルトン売却に比べ回避できたコストを基に譲渡金を設定しましょう。
また、譲渡金の維持には、造作リスト(譲渡対象の内装・設備一覧)の精度が非常に重要です。造作リストが曖昧だと、買主が不要物の処分費用を心配し、譲渡金の減額交渉の材料にされます。不要物を事前に撤去し、詳細な造作リストを作ることで、譲渡後の金銭トラブルを避け、価格の透明性を確保できます。
貸主(大家・管理会社)との信頼づくり
物件の売却をスムーズに進めるには、貸主の協力が欠かせません。貸主の不安や懸念を理解し、信頼関係を築いたうえで交渉を進めることが重要です。ここでは、造作譲渡における貸主が心配するポイントと、その解決方法を解説します。
貸主が懸念する主なリスク
物件の売却において、貸主が特に気にするのは以下の点です。
- 空室が長く続くことによる収入の減少
- 新しいテナントに対する不安(賃料の滞納リスクなど)
- 設備の老朽化による建物への損害
- 臭気や騒音などの近隣への影響
また、売主は、買主が希望する業種が建物の設備容量を超えていないかを確認する必要があります。というのも、建物の電気や水道、ガスの量には上限があるからです。
たとえば、普通のカフェ向けの設備しかない建物に、大量の電力や水を使う居酒屋や焼肉店が入ると、設備に負荷がかかり、トラブルが起きる可能性があります。そのため、貸主は設備に過度な負担をかける業種の入居を制限することが多いです。
貸主への早めの相談が重要
売主は、居抜き売却を決めた段階で早めに貸主に相談を開始するべきです。
売主が買主選びの過程に貸主の意見を取り入れ、進捗を透明に示すことで、貸主に協力的な姿勢を理解してもらえます。
貸主への利益提示で交渉をスムーズに
売主は貸主の承諾を得るために、貸主にも利益があることを具体的に示す必要があります。
たとえば、売主が造作譲渡を早く完了させることができれば、貸主は空室期間を最小限に抑え、賃料収入が安定します。造作譲渡であれば、高額な原状回復工事の手間や費用も回避できます。これは売主はもちろん貸主にとっても大きなメリットです。
買主の財務状況、事業計画、業態のリスクの低さを具体的に提示することは、貸主に安心感を与えます。買主の業種が既存設備の許容範囲内であることをデータで証明することで、貸主の不安はさらに減りますよ。
スムーズな造作譲渡によって、売主・買主・貸主の三者が利益を得られる関係を目指しましょう。
承諾条件の交渉と書面化
売主は、貸主の承諾を得る際に、設備の故障や将来の大規模修繕費用の責任が買主に確実に移ることを文書で明確にする必要があります。また、貸主の承諾は口頭ではなく、賃貸借契約の地位変更に関わる正式な覚書(書面)で行います。この書面を造作譲渡契約の前提条件とすることで、後からトラブルになるリスクを防げます。
居抜き譲渡で起こりやすいトラブルと回避策
居抜き譲渡では、契約内容や所有権があいまいだとトラブルが発生しやすくなります。売主と買主は、事前にリスクを把握し、契約書に具体的な条項を盛り込むことで、こうした問題を防ぐことができます。ここでは、造作譲渡で起こりやすいトラブルとそれを回避する方法を紹介します。
設備の所有権と共用部分の扱い
排気ダクトや換気設備は、建物の共用部分と一体化していることがあります。この場合、誰が所有しているのか、修理や交換の責任がどちらにあるのかがあいまいになりやすいです。
売主は、譲渡の対象となる設備を整理し、共用部分を含む場合は貸主と協議して、修理や交換の義務が買主に移ることを文書で確認する必要があります。これにより、譲渡後のトラブルを避けられます。
譲渡後の営業許可の再取得
買主は、物件が譲渡された後に営業許可を新たに取得する必要があります。許可が下りる前に引き渡しを進めると、検査に落ちた場合に契約や営業開始が遅れるリスクがあります。
契約書に「買主が引き渡しまでに営業許可を取得できなかった場合の契約解除や引き渡し延期の条件」を明記しておくことが重要です。
近隣トラブルと臭気・騒音への対応
譲渡前に、主要設備の専門的な清掃を済ませておくことが大切です。さらに、契約書に「引き渡し日以降の近隣からの苦情対応は買主の責任」と明記しておくと、売主と買主の責任範囲をはっきりさせられます。
契約不備によるコストの増幅と転貸禁止条項
造作譲渡をする際は、支払い期日やキャンセル時の違約金について、口頭での取り決めだけではなく、契約書に具体的に書き込むことが大切です。こうすることで、トラブルが起きたときの解決にかかる時間や費用を大幅に減らせます。また、貸主の承諾なしに譲渡を進めると、契約上の転貸禁止のルールに違反することになり、譲渡自体が無効になるリスクがあるので注意が必要です。
まとめ
居抜き譲渡は、売主・買主ともにコストや時間の節約という大きなメリットがあります。ただし、契約の不備や設備の権利関係、貸主の承諾不足など、注意すべきリスクもあります。
売却をスムーズに進めるには、まず契約書に譲渡対象の設備や修繕義務、営業許可の条件、近隣対応などを具体的に書き込むことが重要です。
譲渡価格の設定もポイントです。売主が避けられる原状回復費用や設備の残存価値をもとに価格を決めると、買主も納得しやすく、交渉がスムーズになります。
リースやローンの有無、共用設備の扱いなども事前に整理しておくことも大切です。こうした準備をしっかり行えば、譲渡後のトラブルを最小限に抑えつつ、売主・買主双方にとって経済的・時間的なメリットを最大化できます。
TEMPOLYは、店舗物件専門の不動産業者として物件売却のお手伝いも行っています。
造作譲渡についてお困りのことがあれば、いつでもご相談ください。

