店舗開発

店舗の集積と競合の関係[後編]

前回記事にて、バー系の店舗と居酒屋系の店舗は、
類似の業種だけに同じようなエリア・ストリートへの出店を指向しているように見える側面だけでなく、
ある種の棲み分けのような分布を示している側面もあることをお話ししましたが
今回はこの背景を考えるため、バー系と居酒屋系の店舗の類似点ではなく、相違点の方に着目します。        


相乗効果か競合関係か

バー系と居酒屋系の店舗は、「酒類の提供を主体とする飲食店」という点では類似する業種ですが、
以下の点でその特性に違いが見られます。

 

〇業態特性の違い(バー系と居酒屋系)

 
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今まで見てきたこの2業種の分布傾向の中で、
まず最初に「バー系は銀座・六本木、居酒屋系は新宿・渋谷に多い」という点を挙げました。
その背景として、他店との競合に関する特性の違いがあると思われます。

バー系は提供する商品としては洋酒を中心とする
飲料&軽食が主体でこの点では多様性があまりない一方、
スポーツバーやダーツバーなどをはじめ、
近年では趣味性やアミューズメント性の要素を取り入れ、
飲食物そのもの以外の付加価値が集客力となっている業態が多数出てきており、
これらは独自性・個別性が強い店舗が多く他店との差別化が明確で、
周辺の飲食店との競合関係が希薄という特徴があります。

居酒屋系は酒類に加え料理のジャンルや品目数が豊富である一方、
ジャンルや価格帯でカテゴリーが分類整理されやすく、
同じような商品を同じような価格で提供する
同業他社が多数存在するエリアが多いという特徴があります。

つまり、バー系は物販でいうところの買回品的要素が強く、
居酒屋系は最寄品的要素が強くて他店との競合関係が厳しいため、
居酒屋系はエリア内のシェアよりも
エリアのパイ全体の大きさに直結する立地の集客力がより重要であり、
都心商業地の中でも不特定多数の潜在顧客量が特に大きい新宿や渋谷などの
巨大ターミナル駅周辺により多く集積しているものと推察できます。

一方、バー系は他店との競合関係が直接的には薄いため、
類似の店舗が特定のエリア・階層に集積しているのは競合によるマイナス面よりも、
自店を含む周辺エリアの認知度の高さにつながるなどプラス面の要素が強く、
集積度の高さは他店との相乗効果をもたらす関係になっているケースも多いと思われます。

 

また、階層別に見るとバー系は低層部での集積度が高いですが、
これは面積が小さい店舗が多く、物販中心の相場で賃料単価が高い路面(1階)や
2階であっても居酒屋系に比べて賃料の総額が大きくはならないため、
相対的に出店しやすいという側面も影響していると思われます。

 

 実務上は、出店に際しての競合関係の分析においては
同業他社の企業ごとにそれぞれ競合係数の設定値を変えていくとか、
それがさらにエリアごとにも違ってくるとか、
非常に細かい計算を積み重ねたうえで判断していくことになります。

 店舗の集積による相乗効果についても、
今回は簡略化のため類似2業種だけで考察しましたが、
実際には同業種・類似業種の状況よりもまずエリアの中核となる
大型施設や集客力の高い人気テナント店舗の立地状況が重要で、

それらが持つ集客動線との位置関係などから始まり、
段階を踏んで最終的に同業種・類似業種の集積度と
自社店舗との関連性などを判定して
売上予測などの数値を落とし込んでいくような流れで分析していきます。

 

 そして、その結果として得られる自社店舗の収益力(売上水準)の査定値に対して、
そのエリア・物件の賃料がどの程度の水準にあるのかという点が最後の関門となります。

 賃料水準は基本的に各エリアで相場が決まっていますが、
これが高いか安いかは、自社にとってそのエリアが
「相乗効果状態」なのか「競合状態」なのかによって大きく違ってくることになります。

 

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