エリアレポート

地価で見る銀座エリア

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1 都心商業エリアの地価水準

 

 東京都心には大型商業施設や店舗ビルが集積する商業エリアが多数あります。JR山手線などのターミナル駅を中心に形成されているところが多いですが、それらのエリアの商業収益力の強さを比較するため、各エリアの地価水準に着目してみます。

 なぜなら、商業エリアのポテンシャルは

  店舗の収益性(賃料負担力)→店舗物件の賃料水準→店舗物件の資産価値(地価水準)

という形で地価水準に表れるからです。

 

各エリアの地価水準(公示地価)の差を見てみると、下の表のようになります。

 地価が特に高額の地点(1㎡当り500万円以上)を有するエリアは9つあり(※オフィスビル街である丸の内や西新宿などを除く)、トップは高額地点の平均で2,000万円/㎡を超える銀座、次いで1,000万円/㎡台の新宿(東口)・渋谷、以下池袋から700万円/㎡程度の秋葉原まで、地価水準には大きな開きがあります。

 

 

〇都心商業エリアの地価水準

地価水準

出典)国土交通省「地価公示」(平成28年)をもとに作成

 

 これらはいずれも商業施設や店舗ビルが高度に集積しているエリアであり、地価水準の差は商業収益力、つまり各施設・各店舗の売上高と大きな関係があります。

 東京都心の最高地点、すなわち全国の最高地点である銀座について、さらに詳しく見ていきます。

 

2 銀座エリアの地価水準

 

 銀座エリアには多数の商業集積ストリートがあり、国税庁の路線価情報を用いてストリートごとに地価水準の詳細を把握することができます。これを見ると、地価が最も高いのは「中央通り」(2,100万円/㎡超)、次いで「晴海通り」(約1,800万円/㎡)、「外堀通り」(約1,000万円/㎡)、以下「並木通り」から約300万円/㎡の「数寄屋通り」まで、銀座と一口に言っても地価水準には最高から最低までおよそ7倍もの大きな開きがあることがわかります。

 

 

〇銀座エリアのストリート別地価水準

銀座エリアのストリート別地価水準

出典)国税庁「路線価」(平成27年)及び㈱ゼン・ランドの保有情報をもとに作成

 

 地価水準の背景には立地している商業施設や店舗の収益力(売上水準)があるわけですが、地価が特に高い「中央通り」・「晴海通り」・「外堀通り」には百貨店や高級ブランド店、ショッピングセンターやファストファッション旗艦店など極めて集客力の高い大型施設が集中しており、これらの店舗の強力な販売力が地価水準に表れていることが容易に理解できます。

 一方で、道路幅員や土地区画が狭く大型施設などが立地していないのに地価が500万円/㎡を超えている高額なストリートもたくさんあり、銀座はエリア全体として非常に高い商業収益力を有していることがうかがえます。

 

 

3 銀座エリアのテナント分布

 

 地価水準と店舗の販売力の関係についてもう少し詳しく見てみます。下の表は、各ストリートに立地している店舗ビルのテナントを業種別に集計し、地価水準と各業種の構成比率との関係を散布図で表したものです。

 

〇ストリート別地価水準とテナント業種分布

ストリート別地価水準とテナント業種分布

図表注;横軸が路線価(円/㎡)、縦軸が業種別構成比率(百貨店など一体運営施設を除く)

出典)国税庁「路線価」(平成27年)及び㈱ゼン・ランドの保有情報をもとに作成

 

上段は左の表が物販比率、右の表が飲食比率を示しています。概ね地価水準が高いストリートほど物販比率が高く、飲食はその逆となる傾向が読み取れます。「中央通り」や「晴海通り」は海外の高級ブランド店やファッション・雑貨関連の店舗が多く、これらはすべて物販に含まれるので一般的なイメージどおりのデータになっていると言えます。これに対して、地価水準が低い「コリドー通り」や「金春通り」は飲食店が40%を超える高水準にあり、銀座の中でも特徴的なストリートとなっています。

 

 さらに、銀座といえば百貨店や高級ブランド店というイメージに加え、「夜の街」としても有名です。高級クラブなどは形態としては飲食店ですが、接客業の要素が強く業種としては飲食とサービスの中間的な業態といえます。ここではこうした店はサービス業に分類し、さらに「接客飲食店」として別枠で集計したのが下段右の表となります。

 サービス業全体で見ると、地価水準が比較的高い「外堀通り」と「並木通り」が30%を超えて高水準にあり、これを接客飲食店だけで見ると「並木通り」に加えて地価水準がやや低い「三原通り」も20%を上回る高水準となっています。

 

 このように、各ストリートの地価水準とテナント店舗の業種別構成には一定の関連がみられます。地価が特に高いストリート(1,500万円/㎡超)は物販中心、低いストリート(500万円/㎡未満)は飲食中心、その中間に位置するストリートは業種別の分布も中間的でばらつきがある、といった感じに整理できます。

 こうした傾向がみられる背景にはテナントの業種別の収益性(販売効率)の違いがあり、都心以外も含めた一般的な商業テナントの販売効率(単位面積当りの売上高)は、

 

 物販>飲食>=サービス

 

となっているケースが多いです。これは各業種における客単価と回転率(店内滞在時間・来店頻度)の水準に大きな差があることに起因していて、通常の場合物販店は飲食店やサービス店に比べると客の回転率が非常に高いため、飲食店やサービス店よりも販売効率が高くなります。サービス業には様々な業態があって一概に言えない面もありますが、客単価や回転率が低いうえに、マンツーマンでサービスを提供するなど高コストなオペレーションとなっている業種も多く、物販店や飲食店よりも販売効率が低くなりがちです。

 

しかし、銀座のような都心商業エリアの一等地となると、接客飲食店など販売効率が非常に高いサービス業のテナントが多数集積し、一般的な飲食店や物販店よりも賃料負担力が高く、地価水準が比較的高いストリートでの出店が可能になっています。銀座エリア内では地価が最も高い「中央通り」・「晴海通り」が物販中心、これらに続いて地価が高い「外堀通り」・「並木通り」が物販よりもサービスの方が多いテナント構成となっている点が、銀座の商業エリアとしてのポテンシャルの強力さを表していると言えるでしょう。

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