六本木エリアのテナント出店動向
六本木エリアの店舗ビルについて、過去1年間(2015年第二四半期~2016年第二四半期時点)の入居テナントの移動状況を整理してみました。
六本木エリアの主要ストリートである六本木通り・外苑東通り・芋洗坂に面する店舗ビルでこの1年間に把握された退店・出店動向を集計すると、
以下の通りとなりました(六本木ヒルズ・ミッドタウン等のショッピングセンターを除く)。
店舗ビルテナントの年間移動状況
当該3ストリートのテナント数と空室数の合計は概ね1,100件前後ですが、そのうち約140件の移動があり、1年間で少なくとも1割強のテナントが入れ替わっていると言えます。
その詳細をまず新たに出店したテナントの業種で見ると、飲食が半数を大きく超えて最多、次いで事務所他(業種不明も含む)、サービスと続き、物販はわずか2件のみでした。
飲食店が圧倒的に多いという点が六本木エリアの特色をよく表しています(飲食にはキャバクラなど接客サービス系の店舗も含めています)。
続いて1年前に入居していたテナント(退出テナント)の業種や空室状況と、その後入居したテナントの業種の異同などを比較します。
1年前に空室だった物件に出店したテナントが24件、1年前と同じ業種のテナントが出店したケースが55件、異業種テナントの出店が19件となっており、退出したテナントと同じ業種のテナントが出店したケースが全体の4割弱で最多となっています。
その他、同じビル内で別のフロアに移動した館内移転のテナントが1件(飲食)、新築ビルに入居したテナントが5件、テナントが退去したまま空室になっている区画が15件となっています。空室については、テナントが入居した空室24件に対し、新たに発生した空室が15件なので全体の空室数は若干減少していると思われます。
さらに、業種の異同のケースについてストリート別に集計すると、以下のような傾向が見られます。
店舗ビルテナントの変化
いずれのストリートでも、特に多いのが飲食の中でも類似の業態が後継テナントとして出店するケースです。
六本木通りや芋洗坂ではバー系・接客サービス系(アルコール類の提供が主体で夜間の営業が中心)の店舗が退去した後、再び同業種のテナントが入居しているケースが最多です。
外苑東通りでもこのケースが多いですが、最多は食事が主体のレストラン系から同じレストラン系、次いで空室にバー系や事務所が入居したケースとなっています。この他にも空室に飲食テナントの入居したケースがあり、空室が解消した24件のうち半数が外苑東通りの物件となっています。
このように、同業種の中でも特に類似性の高い業態のテナントが後継として入居している背景としては、まず各ストリートや個別ビルの店舗集積イメージが確立しているという点が考えられます。
六本木は全体が飲食店中心のエリアですが、細かく見ても「この辺りのビルにはこういう感じのお店が多い」、というイメージがつかみやすく、ビルオーナー側も既存テナントと近い業態の後継テナントを優先している面もあると思われます。
また、飲食店の特徴として、選好する階層や必要な店舗面積(客席数)、什器備品の配置などが業態によって異なってくるため、「居ぬき物件」なども含め、同じビルの同じ区画には同じ業態のテナントが入れやすいという点も関係していると思われます。
六本木エリアは、2000年代に入って六本木ヒルズやミッドタウンの開業で物販店舗が大幅に増えましたが、それ以外の店舗ビルでは飲食やサービス中心のテナント構成が定着しており、直近の1年間の動向を見てもその特色を維持し続けていると言えます。